抄録
症例は82歳女性で, 右胸壁に孤立性の腫瘤を指摘され, 経皮生検にて悪性リンパ腫と診断された.化学療法への反応が悪く, 疼痛軽減を目的に右胸壁切除, 再建を行った.腫瘍はB細胞性非ポジキンリンパ腫, びまん性大細胞型であった.局所再発し放射線治療を追加したが, 初回治療より1年3ヵ月経過し, 寛解状態で経過観察中である.胸壁原発悪性リンパ腫 (Non-Hodgkin's lymphoma, NHL) は, 慢性膿胸に合併するB細胞性リンパ腫として知られているが, 本症例は結核や膿胸の既往がなく, 基礎疾患を伴わないものとしては本邦報告4例目にあたる.膿胸合併悪性リンパ腫ではEBウイルスの関与が示唆されているが, 本症例の腫瘍組織中のEBウイルスDNA (W fragment, PCR法) およびEBERs (EBV-encoded small RNAs, in situ hybridization法) は陰性であり, EBウイルスの関与は否定的であった.