抄録
症例は63歳男性.1997年検診で胸部異常陰影を指摘され当院を受診した.胸部X-P, CTではS6に腫瘤影が認められた.肺癌を疑いTBLB, CTガイド下針生検を行ったが, 陰性であった.またCTで大動脈弓は気管, 食道の右側背側に位置しており, 下行大動脈は食道の右側を走行していた.以上より右大動脈弓を伴う左肺腫瘍と臨床診断下に, 確定診断のため手術を施行した.術中迅速標本で異型細胞を認めたため, 縦隔の郭清を伴う下葉切除を行った.肺動静脈は通常の位置にあったが, 動脈管索は拡張した左鎖骨下動脈起始部と左肺動脈に付着しており, 迷走神経はこの左側を通り, 反回神経は動脈管索を背側から回って上行していた.