抄録
目的: 肺切除後に酸素投与を行わない周術期管理の妥当性について検討した.
方法: 対象は原発性肺癌で肺葉切除術を施行した35症例.術前に, 禁煙および気管支拡張剤吸入を用いた喀痰排出訓練.手術は, 全例後側方切開, 第5または第6肋骨床開胸下に行い, 閉胸時に肋間神経を切断.術翌日早朝より自力坐位にてネブライザー吸入喀痰排出.術後2日目に尿道カテーテルおよび硬膜外カテーテルを抜去し, 歩行開始.酸素投与は術後1日目朝より中止し, 経皮的酸素飽和度測定を行い, 投与の有無を決定.
結果: 35例の術後1日目から7日目の経皮酸素飽和度の平均値は全て96%以上で, 術後1日目以降に酸素投与を必要としたのは1例のみであった.全例で術後2日目には鎮痛用の硬膜外カテーテルを抜去し, 歩行開始出来た.疼痛は経口非ス消炎鎮痛剤のみで対処可能で, 退院時に鎮痛薬を要したのは6例のみであった.
結論: 酸素投与を行わない周術期管理は早期離床を促進し, 術後在院日数短縮につながる可能性がある.