2003 年 17 巻 7 号 p. 715-720
1995年12月より2002年11月までに, 非小細胞性原発性肺癌にて標準的手術 (肺葉切除+ND2a) が施行された症例128例を術前に自己血貯血 (400m1) を行った77例 (A群) と貯血のない51例 (B群) に分類し, 術後合併症や予後との関係を比較検討した.同種血輸血回避率はA群: 93.5%, B群: 80.4%でA群が有意に (P=0.03) 同種血輸血を回避できた・また・術後の最低ヘモグロビン値でもA群の10.89/dlに対しB群は10.29/dlと有意差 (P=0.03) を認めた.一方, 術後の合併症, 手術関連死亡率では両群間に差を認めなかった.術後の5年生存率では, 全体でA群が70.0%, B群が72.2%と差を認めなかった.術後病期1期に限ってみてもA群で78.6%, B群で78.9%と差を認めなかった.本法は肺癌手術患者において同種血輸血回避に有用かつ安全な方法と考えられる.