2004 年 18 巻 2 号 p. 114-119
穿破を伴った縦隔奇形腫2例を経験し, その病因, 臨床像との関連に文献的考察を加えて報告した.
症例1は35歳女性.発熱, 胸痛を主訴として, 胸部CT上径5cmの充実性前縦隔腫瘍を指摘された.CT上周囲への浸潤所見を認め, 悪性腫瘍との鑑別が困難であったため生検を行ったが, 確定診断にはいたらなかった.摘出術を施行し, 成熟奇形腫の肺穿破と診断した.症例2は49歳女性.軽度の血痰, 咳噺が続き胸部X線上肺炎を疑われ, 内科的治療を受けていた.胸部CTを行ったところ前縦隔に嚢胞状腫瘤陰影, その周囲にスリガラス状間質性陰影を認めた.奇形腫の肺穿破が疑われたが症状は血痰, 軽度の咳嗽のみであった.腫瘤摘出術, 病理組織学的検索により成熟奇形腫の肺穿破と判明した.縦隔奇形腫においては明らかな肺穿破にもかかわらず軽微な症状のみで経過する症例もあり, 本疾患では多彩な臨床症状を呈することを念頭において診断にあたることが必要である.