日本呼吸器外科学会雑誌
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喫煙係数からみた肺癌手術予後
福原 謙二郎中川 勝裕阪口 全宏岩崎 輝夫安光 勉
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2004 年 18 巻 2 号 p. 98-102

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抄録

肺癌術後の予後因子としての喫煙の影響を明らかにするために, 病理病期I期肺癌切除例579例を対象として, 以下の検討を加えた.生存期間を目的因子とし, 年齢, 性, IA, B期の別, 術前と術後の循環器呼吸器系合併症の有無, 喫煙係数 (Brinkman Index: 以下B.I.), 組織型の7項目を共変量としてCoxの比例ハザードモデルによる単変量, 多変量解析を行った.単変量解析では, 7項目全てが有意な共変量であった.多変量解析 (ステップワイズ法) では, 年齢, A, B期の別, 術前合併症の有無, 喫煙係数の4項目が有意な独立予後因子で, 喫煙係数はHazard ratio 2.007で, 年齢に次いで予後への影響が大きかった.多喫煙群 (B.I.≧400) の予後は, 少喫煙群 (B.I.<400) に比し有意に不良であったが, 他病死を打ち切りとすると, 二群間に差は認めなくなった.他病死の内訳は肺炎, 呼吸不全等の呼吸器系疾患44例, 続発癌33例, 心筋梗塞, 脳卒中等の循環器系疾患24例, その他21例であった.
以上より, I期肺癌切除例においては, 年齢, 病理病期, 術前循環器呼吸器系合併症の有無, 喫煙係数の4項目が有意な独立予後因子で, 喫煙係数は年齢に次いで影響が大きかった.この対象群では予後の差は他病死によるものと考えられた.

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