日本呼吸器外科学会雑誌
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肺血管肉腫の1切除例
小倉 芳人下高原 哲朗西島 浩雄松本 英彦柳 正和島津 久明
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1993 年 7 巻 2 号 p. 157-164

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抄録
64歳, 女性.咳嗽, 呼吸困難, 血痰を主訴として来院し, 胸部X線写真で左無気肺を指摘された.胸部断層写真, CT, MRIなどにより左肺門部に径58×33mm大の腫瘤が検出され, 気管支鏡下に認められた左気管支内腔を占める黄褐色の軟らかい腫瘤の生検により血管肉腫と診断された.手術は, 左肺全摘術と肺癌のR2リンパ節郭清を施行した・腫瘍は左肺動脈を取り囲み, 肺動脈内腔は腫瘍塞栓によって完全に閉塞されていた.HE染色・鍍銀染色・免疫組織化学的染色などによって血管内皮細胞由来の血管肉腫であることが確認された.術後, 肺動脈断端・副腎・脳に再発が起こり, 放射線療法やIL-2の投与を行ったが効なく, 術後284日目に死亡した.肺の血管肉腫はきわめて稀な腫瘍であるが, 発育速度が早く, 早期に血行性転移を起こす悪性度の高い腫瘍であるので, 根治的な外科的切除に加え, 術後の慎重なfollow-upと補助榛法の実施が重要と考えられた.
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