症例は62歳・男性で, 胸部X線上異常影のため来院した.明らかな自他覚症状はなかったが, 胸部単純写真では上縦隔の左右両方向への拡大がみられた.胸部CT及び胸部MRIでは上縦隔に気管後方から両側に跨り, 気管及び食道を圧排している大きさ10×8×4cmの腫瘤を認めた.この腫瘤は充実性部分を持たない嚢胞性腫瘤と術前診断した.全身麻酔下・仰臥位で胸骨上窩横切開を行い, 気管左側より嚢腫壁を露出した.更にファイバースコープを用いて嚢腫内腔の観察を行い, この腫瘍が薄壁単胞性で, 充実性部分を持たないことを確認した.嚢腫内容液を吸引した後, Doxycyclineによる嚢腫内腔に対する癒着術を行った.部分的に切除した嚢腫壁の病理組織検査により心膜嚢腫と診断した.術後経過は順調で, 術後1年の現在再発を認めない.