高校から大学につながる資質・能力の育成を念頭に置いた学習者中心の授業改善が大学に要請されてきた.各々の教員が新たな教育方法をどう受け止めて学習者中心の授業づくりに臨んでいるのかを捉えるための,妥当性の保たれた分析視点の導出が求められる.本研究では学習者中心の教育の視点から,授業改善を図る教員が持つ教育観や授業に対する考え方に着目し,授業観の構造を検討した.まず,学習者中心の授業改善に向かう授業観尺度を作成するための予備的検討を行い,5つの因子を見出した(調査1).次に教員対象のインタビュー調査により,“学習者中心志向”を中心に,因子間の関係を質的に探り,内容面から妥当性を補った(調査2).さらに修正された当該尺度の安定性と識別性のそれぞれの側面について,新たに収集したデータを用いて確認的検証を行った(調査3).パス解析を通して,“学習者中心志向”に対し,4つの各下位尺度(“変化への抵抗感”,“支援受容感”,“固定能力観”,“授業効力感”)からの影響関係が確認された.最後に分析結果を踏まえ,教育開発支援への示唆と今後の課題を論じた.