2004 年 17 巻 1 号 p. 17-26
要旨:本研究では,海面上昇対策便益の計測を通じて, CVM において支払手段の違いによる町Pの変動を分析し,支払方法に対する公平感が町Pの結果に影饗を与えることを明らかにした。その際,支払手段として「一律の金額」「任意の寄付金」の2 種類,また支払単位として「一生涯」「毎年」「毎月」の3種類を設定し,海面上昇対策に対するWTP をたずねるためのアンケート調査を実施した。そして,支払方法に対する公平感を変数として組み込んだ分析モデルを構築し,本モデルを用いてWTP を計測した。その結果,いずれの支払単位においても,支払手段を「一律の金額」としたときの町Pの方が「任意の寄付金」としたときの町P より大きくなり,「任意の寄付金」という支払手段に不公平感が存在することが明らかになった。また,「一律の金額」に対する公平感を100%としたときの相対的な「任意の寄付金」に対する不公平感について,「毎月」あるいは「毎年」の「任意の寄付金」に対する不公平感が約50%であり,「一生涯」の「任意の寄付金」に対する不公平感は約90%であることがわかった。