2008 年 20 巻 4 号 p. 53-64
要旨:本論では,2002 年に施行された「海域使用管理法」にもとづく中国沿岸域管理の実態と課題を,青島市のケーススタディを通じて明らかにした。山東省青島市は「海域使用管理法」が実施されて以来,中国が最初に認定した四つの沿岸域管理モデル地区の一つであり,沿岸域管理に関しては全国に先駆けてすでに90 年代初頭から取り組みはじめた先駆的な地域である。青島市沿岸域管理の実施状況への検証を通じて,今日の中国における沿岸域管理は,効率化のために国有を前提とした海域使用権の創設,海域使用権の有料化,海域使用権取得におけるセリ・入札方式の導入などといった市場メカニズムを中心とする管理メカニズムに基づいて行われていることが明らかとなり,海域使用主体の資格問題,補償金算定問題,漁業・漁民保護問題,海洋環境保護などの点で多くの課題が残されていることが判った。