要旨:漁村地域における主要な沿岸構造物である漁港施設は,膨大な既存ストックを有しており,多くの施設が更新期に近づいておりその劣化が懸念されている。そのため,要求される機能の適切な維持を図るため,性能向上や延命化に努めるなどライフサイクルマネジメントの導入が求められている。これらの導入には,対象施設の劣化度を的確に把握することが不可欠である。しかし,診断者の違いによる劣化度評価のバラツキの抑制や劣化診断の効率化といった課題があり,明確な判定基準と診断手順の設定および診断の省力化が求められている。本報告では,漁港施設の劣化度の指標化と劣化診断手順の簡易化を指向し,これまでに適用事例がない既設漁港施設を対象に劣化診断手法としての表面P 波を用いた衝撃弾性波法の適用性について,コンクリートの含水率や膨張性ひび割れが表面P波の伝播特性に及ぼす影響について検討した。更に,劣化した既存漁港施設を対象に本診断法の精度,適用範囲等について検討した。