沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
論文
海域での簡易的な送水技術の一考察
森田 雅子田邊 勝深谷 惇志北澤 大輔水上 洋一
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2016 年 29 巻 3 号 p. 45-56

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抄録

要旨:有明海湾奥部では,夏季に貧酸素水塊が発生しており,これが,二枚貝の資源減少の原因の1つと考えられる。この貧酸素水塊の解消を目的として,エアレーションが試みられているが,広範囲におよぶ漁場の水質を改善するには大規模なエアレーション装置が必要であり,費用面などから実現性は低い。そこで本研究では,安価で簡易的な方法で表層の海水を底層へ送水し,貧酸素状態を緩和する技術の検討を行った。水槽実験を行い,対策装置を作成した。また,現地試行を行い実海域での運用性を確認し,数値計算によりその効果を算出した。現地試行では,作成した装置の平均送水量は,約14m3/min(約2ノットで曳航した場合)であった。数値計算による効果の評価では,溶存酸素濃度を2.0mg/L以上に上昇でき,曳航線を中心に最大で約4m幅で溶存酸素濃度を1.0mg/L以上に上昇でき,効果の持続時間は21.8秒間と算出された。これらの結果より,1漁船1日あたり0.0432km2の範囲で貧酸素緩和を行えることが示唆された。

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© 2016 日本沿岸域学会
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