2019 年 32 巻 2 号 p. 71-81
要旨:近年,地球環境問題・エネルギー問題などの課題解決に向けた新たな海洋利用開発がさかんに推進されており,そのために地域漁業との共存を図る方策が求められている。本稿では,久米島の海洋深層水開発事業を事例として,その開発をめぐる受容の過程を分析することで,漁業と新たな海洋利用開発との共存の要件について検討した。その結果,次の事柄を導出した。(1) 海洋深層水開発事業は,久米島の地域産業を発展させた,きわめて地域公益性の高い事業である。(2) 海洋深層水という新しい地域資源について,養殖生産の技術開発およびその移転,実用化というしくみを介すことで,高い漁業価値を生み出した。(3) 海洋深層水開発の当初の事業目的がおもに水産利用であり,地域の発展に資するものと規定されていたことが,漁業者の主体的な参加を促し,きわめて円滑な合意形成を促した。(4) 久米島の海洋深層水開発については漁業者の信頼を得た政治家と行政職員(研究者を含む)との連携が有効に機能した。