沿岸域学会誌
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論文
貝毒発生時の潮干狩り場における食の安全対策とその意義 ~大阪府内での取り組みと新聞報道から~
脇田 和美福代 康夫
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2020 年 33 巻 3 号 p. 59-69

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抄録

要旨:2002年、大阪府沿岸で規制値を超える貝毒が初めて検出された。通常は貝毒が発生すると、食中毒防止の観点から潮干狩り場の開場を自粛する。しかし大阪府内の潮干狩り場では、無毒で安全な貝をお土産用として準備し、採った貝と交換して食の安全を確保することにより開場を継続している。本稿では、関係者への半構造化インタビューにより食の安全対策の実態や貝毒による潮干狩り場への影響等を明らかにした。また、貝毒に関する新聞報道の計量テキスト分析と記事の精読により内容の経時変化を明らかにし、潮干狩り場の取り組みに対する社会的評価を読み取った。その結果、運営主体による安全対策の徹底と中毒患者ゼロの実績、水産課からの自粛要請なしの事実が明らかとなった。貝毒に関する記事は減少する一方、潮干狩り場の安全対策は報道され続けており、取り組みは社会的に受け入れられているといえる。これらの要素が総体として貝毒に対する周知度・理解度を高めた可能性が示唆され、実際に貝毒による来場者数への影響は近年回避できている。潮干狩りは市民の海の娯楽であり、今後は潮干狩り場や貝の交換に対する来場者の意識も明らかにしていくことが重要である。

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