沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
論文
沿岸住民が描く瀬戸内海の望ましい姿 ~目指すべき「豊かな海」の具体化に向けて~
脇田 和美杉野 弘明鈴木 崇史森本 昭彦
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2023 年 35 巻 4 号 p. 55-67

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抄録

2015年、瀬戸内海の目指す姿が「きれいな海」から「豊かな海」へ転換され、各地域が目標を設定して取り組むことが求められている。本研究は、瀬戸内海の将来像を描く上で最も基礎的な情報の一つとして、沿岸住民の持つ瀬戸内海の望ましい姿を明らかにした。兵庫県・香川県住民880名を対象にWEBアンケート調査を行い、自由連想法により得られた回答をテキスト分析し、上位頻出語について年代別・県別にコレスポンデンス分析した。その結果、①瀬戸内海がこのままきれいな海で、住民に海の恵みを与え続け、それを基盤とした地域の発展を望むこと、②20~30代は地域の発展を、50~60代は現状の環境維持を、40代はその中庸を望む傾向があること、③兵庫県回答者は食料供給サービスとしての海産物の豊かな海を、香川県回答者は文化的サービスとしてのゴミのないきれいな海を望む傾向があること、が明らかとなった。「きれい」は主に景色、水質、ゴミのない、の3つを意味すること、「豊か」は主に食料資源としての海産物を意味することも確認された。今後は、幅広い関係者が合意できる目標設定に向け、多様な利害関係者がそれぞれに望む「豊かな海」のさらなる具体化が必要である。

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© 2023 日本沿岸域学会
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