沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
35 巻, 4 号
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論文
  • 中村 翼, 進士 淳平, 松井 隆宏
    2023 年 35 巻 4 号 p. 45-54
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル 認証あり

    本稿では、三重県鳥羽市浦村のカキ養殖を事例に、養殖漁場の配分がどのようにおこなわれ、その方法がどのような背景のもとで採用されているかについて、漁場の利用方法と漁場の質に注目して分析した。その際、漁場の環境調査も実施した。その結果、漁場は抽選方式を基本として漁業者に配分され、その中で、最も良い漁場は全員で平等に、その他の漁場は小規模漁業者に配慮しつつ配分されていることが明らかになった。また、環境条件が特異的である漁場は抽選の対象外であり、希望者が利用できる配分方法であった。漁場の利用規模に差はあるが、その中で、最も良い漁場は全員で平等に利用し、その他の漁場において相対的に小規模な漁業者に若干の配慮をするという、コミュニティ内における独自の公平性の基準により、配分方法や利用ルールが作成されていることが分かった。また、それらに関わる、漁業者の漁場の質やその配分に関する経験的な判断の妥当性を、環境調査で取得した実際のデータより確認できた。

  • 脇田 和美, 杉野 弘明, 鈴木 崇史, 森本 昭彦
    2023 年 35 巻 4 号 p. 55-67
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル 認証あり

    2015年、瀬戸内海の目指す姿が「きれいな海」から「豊かな海」へ転換され、各地域が目標を設定して取り組むことが求められている。本研究は、瀬戸内海の将来像を描く上で最も基礎的な情報の一つとして、沿岸住民の持つ瀬戸内海の望ましい姿を明らかにした。兵庫県・香川県住民880名を対象にWEBアンケート調査を行い、自由連想法により得られた回答をテキスト分析し、上位頻出語について年代別・県別にコレスポンデンス分析した。その結果、①瀬戸内海がこのままきれいな海で、住民に海の恵みを与え続け、それを基盤とした地域の発展を望むこと、②20~30代は地域の発展を、50~60代は現状の環境維持を、40代はその中庸を望む傾向があること、③兵庫県回答者は食料供給サービスとしての海産物の豊かな海を、香川県回答者は文化的サービスとしてのゴミのないきれいな海を望む傾向があること、が明らかとなった。「きれい」は主に景色、水質、ゴミのない、の3つを意味すること、「豊か」は主に食料資源としての海産物を意味することも確認された。今後は、幅広い関係者が合意できる目標設定に向け、多様な利害関係者がそれぞれに望む「豊かな海」のさらなる具体化が必要である。

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