2024 年 37 巻 3 号 p. 25-35
里海は、多様な関係者による資源利用や環境保全が実施されている沿岸域の姿として注目されているが、実現に必要な関係主体の連携や関係性については明らかになっていない。本研究では、沿岸域管理の一部である里海づくりに関わる関係者によって形成される里海コミュニティについて、活動の発展に伴う関係者の社会ネットワーク構造の形成と変化およびその要因を捉えるために、岡山県備前市日生を事例として取り上げた。関係性の媒介者として着目した三人のエゴセントリック・ネットワークを元に、四つの発展段階のネットワーク構造を分析した。サブグループに着目することで、異なる目的を持つ複数のサブグループが段階に沿ってネットワーク構造は重層化していることが分かった。また、媒介の役割を持つ関係主体の増加や着目した媒介者の働きかけにより、関連する目的を持つ主体が加わることで新たなグループが形成されていた。これは、海に直接的な関わりを持たない主体を含む、多様な関係者が里海づくりに関わる機会を増やすために重要であると考えられる。今後は、関係者が活動に関わる目的や関係者間の関わりとマネジメント成果の関係について明らかにする必要がある。