2024 年 37 巻 3 号 p. 37-43
神社の存在は地域共同体の紐帯を強める大切な役割を果たしてきたが,東日本大震災時には多数の神社が被災し,現在においても再建された神社はごく僅かである。本研究では沿岸部に立地する神社に焦点を当て,南海トラフ地震による津波被災リスクの実態を捉えるとともに,東日本大震災後の神社再建の経緯と課題を通して,神社再建に向けた方策を整理した。調査の結果,国内の沿岸部(海岸線から500m以内)には3,376社の神社が鎮座し,その内,南海トラフ地震による津波被災が想定される24都府県には1,126社が津波被災リスクを有していることを捉えた。また,宮城県における神社再建の取り組みでは,各神社及び神社庁の資金不足,神社の未登記の状態,各自治体の申請書類の不統一等によって,神社再建に遅れが生じた実態を明らかにした。以上より,神社の津波被災を想定した体制面・資金面・申請面での「事前準備」の重要性が示唆された。