抄録
近年、日本企業において「人的資本経営」が急速に普及しているが、その理論的基盤とされる人的資本理論と、実務上の人的資本経営との関係性については十分な検討がなされていない。本稿では、人的資本理論の主要文献および経済産業省の『伊藤レポート』『人材版伊藤レポート』シリーズを対象に文献分析を行った。分析の結果、本来、教育投資や能力形成を対象としていた人的資本理論が、日本における経営政策の文脈で再解釈され、企業価値向上を目的とする経営資源管理の枠組みとして変容したことが明らかになった。本稿は、この概念変容の過程を整理し、人的資本経営概念の形成過程について考察するものである。