支援対話研究
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選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 一事例の実践報告を基に
    坪田 祐季, 栗野 理恵子
    2023 年 8 巻 p. 3-19
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
     本研究は,A 県B市における学校緊急支援の実践とその実践に対する対象者からのフィードバックの分析から,学校コミュティにおける支援チームの心理支援体制の有効性と今後の改善点について明らかにすることを目的とした。分析の結果から,学校が緊急事態から回復するためには,学校外部の属性を持った支援チームが入り,児童生徒や教師の傷つきや混乱を支えながら,学校をエンパワメントしていくことが有益であること,また,特に若手教員に対して緊急支援に関する心理教育を事前に行っていくことの必要性が示唆された。さらに支援チームは,教師自身も当事者であるという視点を持ち支援にあたることの重要性が示唆された。外部の支援チームと学校が協働して心理支援を展開していくためには,【心理教育】,【関係づくり】,【緊急時のシステム構築】といった予防の視点も含めた実践を行うことや,緊急事態になった際の対応シミュレーションを学校内だけでなく学校コミュニティで行なっておくことが重要であると考えられた。日頃から地域における支援システムやネットワークを構築していくことが重要であり,学校コミュニティに携わる心理職は,そのネットワークの一員として学校内外において心理教育や緊急支援マニュアルの作成などに主体的に関与していくことが求められる。
  • 主体的信頼創造の可能性
    浦田 夏実, 佐藤 扶由夫, 松枝 修
    2023 年 8 巻 p. 20-39
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    信頼の重要性については哲学、社会学、心理学、経済学、経営学など多くの分野で先行研究が行われてきた。その多くは、信頼の定義、信頼性評価に関するものであり、信頼関係が成立している際の構成要素を分析しているものもある。 一方、主体的に信頼関係を創りあげていくという「主体的信頼創造」に焦点をあてて取り上げたものは少ない。それは成人の70~80%が「他者依存段階(リアクティブ)」の意識発達段階に属するという、成人発達理論をベースとしたリサーチとも合致する傾向と言えるだろう。 本論文においては、そのような背景においても、一定の機会が与えられることで意識の変化が起こり、主体的に信頼関係を創る行動変容が起こり得るという「自立創造段階(クリエイティブ)への進化に関する実践の記録と論考である。
  • 教師の悩みや迷いに対する指針として
    西田 拓大
    2023 年 8 巻 p. 40-55
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    2021年4月4日に行われた原口佳典氏による講座「教える場を学びの場に変えたい人のためのコーチング講座」(主催:オンライン授業をオンラインで学ぶ会)は、コーチの立ち位置や目標を明確にした講座だった。この講座を通して見えてきたことは、これからの教育を考えたときに、コーチング的なアプローチ、そして、コーチング的な教師のあり方がとても重要になってくるということだ。筆者自身、原口佳典氏の講座でコーチングを学ぶきっかけができ、さらに、原口佳典氏、上條晴夫氏による「コーチングの考えを自らの経験を語ることで学ぶ会」という連続講座により、さらにコーチング的なアプローチの重要性を強く感じるようになっていった。コーチングのさまざまな団体はその理念、行動規範を「倫理規定」としてまとめている。連続講座で最後に扱った「ICFコーチング倫理規定」「コンピテンシー」に私が出会ったとき、教育にも同じようなものが作れないだろうか、そして、それが教師を支える、指針のようなものにならないだろうかという問いを持った。この問いから始まった、「教育コーチング倫理規定プロジェクト」は、対話的・協働的なプロジェクトになり、「教育コーチング倫理規定」を提案するに至った。約1年に及ぶコーチングの学びと、そこから生まれたコーチングの教育における可能性を示す取り組みとしての「教育コーチング倫理規定プロジェクト」を紹介し、検証する。
  • ~よりよい1on1のために~
    重田 孝夫
    2023 年 8 巻 p. 56-66
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    1on1の会話は、会社での上司と部下に限らず、医師と患者の間やコールセンターでの通話など膨大な数に上ります。ただ残念ながら、それらの1on1で相手の「感情に共感」する相槌を打っている人は、コールセンターでの調査や社会人の受講生を対象とした筆者の授業での経験から推測すると少数派です。普段の会話で使っていないことと共感を同意や相手の立場の理解と混同している人が多いことが原因と言えます。また、相槌の言葉が「そんなんですね」といった一部の語彙に限られている人が多いのが現実です。相槌の種類と語彙を増やせるようになれば、会話が円滑に展開します。特に、「感情への共感」の相槌を打てるようになれば、コールセンターや医療機関であればNet Promoter Score(NPS)の向上、会社のマネジャーであれば360度評価診断でのスコアの改善が期待できるでしょう。 上手く「感情への共感」の相槌を打てるようになってもらうには、座学での知識の吸収だけでなく、実際に試行・実践してもらい、個別にフィードバックすることが重要です。
  • ~実践の8年間を振り返る
    原口 佳典
    2023 年 8 巻 p. 67-74
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
     筆者は長年、非営利組織での活動とプロコーチとしての活動に関わるうちに、この2つのセクターが極めて親和性が高いのではないか、との仮説を得た。この論では、その仮説を言語化することにより、よりこの2つのセクターの相互理解が深まるきっかけとしたい。
  • 原口 佳典
    2023 年 8 巻 p. 75-83
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    筆者はプロのコーチとして、コーチングの実践を行っているが、その中で、「自己肯定感」と言う言葉の使い方について疑念が生じた。「自己肯定感」については、一般に高い方が良い、という印象があるが、しかし、それは本当だろうか。また、低いことが問題なのだろうか。今回の論考では、無意味な「自己肯定感が高い/低い」の議論を終らせ、コーチとして、よりクライアントにとって「自己肯定感」についての有用なアプローチができないか、その可能性を先行研究から探るものである。
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