支援対話研究
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成人の発達障害者のためのコーチングの可能性
高等教育と職域の架け橋として
木内 敬太
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 3 巻 p. 15-29

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抄録

近年、成人の発達障害者の支援においては、高等教育、職域ともに、これまでの障害者を見守り、支えるという支援だけでなく、障害者の個性を活かし、活動能力を高めるための積極的な関わりが、支援を行う専門家と、教職員や管理監督者などの非専門家の双方に求められるようになってきている。そこで、クライアントの強みに目を向け、活動能力を高めることに焦点を当てた対話的支援法であり、障害者と関わる非専門家の研修にも応用できる、コーチングへの期待が高まっている。すでに欧米では、発達障害者に対するコーチングの実践と研究が進んでいる。本稿では、ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害、境界性知的機能を取り上げ、障害の特徴と大学や職場での困難について記述するとともに、各障害に対するコーチングの有効性と日本における発達障害者へのコーチングに関する今後の課題について論じた。発達障害者が他の人々と同等に自立した生活を送れるようにするためには、コーチングにより、修業、日常生活、就職、就労の一貫した支援を行うことが重要である。我が国においてそのような体制を確立するためには、発達障害者へのコーチングの有用性と必要性についての啓発、実践家の養成、発達障害者へのコーチングの効果研究、非専門家のコーチング技能習得の有効性の研究を進める必要がある。

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2016 一般社団法人日本支援対話学会
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