2023 年 18 巻 p. 81-90
本研究では「機械翻訳と英語教育の共存」について検討する。学校教育の情報化が進む中,機械翻訳導入が英語学習に与えるインパクトは大きい。学力別三層に分けた大学生166名及び小中高専任教師123名を対象に「機械翻訳に対する抵抗感」「英語学習に対して感じる必要性と意義」について調査し,学力下位層に焦点を当てて分析した。検証の結果,教師は学生に比べ機械翻訳への抵抗感が有意に強く,下位層は最も弱かった。また,機械翻訳が普及した際の英語学習の意義について,上位層の学生は「機械翻訳を利用する土台として重要」,中位層は「学習意義低下」,下位層では「漠然と英語学習は必要」と考える傾向が見られた。機械翻訳は,抵抗感が低く,学習意義を消極的に捉える下位層にとって,英語学習を回避する“逃げ道”になり得ることが示唆された。機械翻訳の教育的効果を検証し下位層へのアプローチを検討することはリメディアル教育の喫緊の課題といえよう。