2020 年 2 巻 p. 26-
TEIをもとにした日本古辞書の効率的な符号化モデルについて論ずる。日本の古辞書(1615年以前の日本編纂辞書)、具体的には平安時代の漢字字書を本稿では例とする。古辞書はしばしば構造を見いだしがたく資料として利用しにくい。そのような懸隔を構造注記によって補いたい。また、これらの資料を共通のモデルで符号化することで、資料間の構造差が見いだしやすくなることが期待される。ここで用いるスキーマは、TEI(Text Encoding Initiative)で、国際的に用いられている本文符号化の取り決めである。さまざまな符号化の考え方を包摂し、そのなかには辞書や語彙データベースに関するものもある。TEIは現状東アジアの古典的辞書への適用が十分に検討されているわけではないので、符号化に際しては考慮すべきことが多い。本稿では、古辞書に見られるさまざまな要素をどのように符号化することが情報交換において望ましいか論ずる。