抄録
本研究の目的は、近年幼児教育において重要視される「非認知的能力」に関して、認知的能力も含め包括的に5歳児(年長児)の実態を明らかにする事にある。非認知的能力は向社会行動と実行機能の二側面から、実行機能の指標としてサイモン・セッズ課題(抑制・非抑制)と逆唱課題を、社会性の指標として子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)の仲間関係と向社会行動を採用した。さらに、語彙・統語・ひらがな読み正確性を認知的能力として言語発達を包括的に評価し、非認知能力との関連を検討した。また5歳児の前半(7-8月)と後半(2月-3月)の時期の違いについても検討を行った(n=95)。
その結果、①逆唱は言語課題と、抑制課題では語彙、非抑制課題ではひらがな読み課題と相関が高い、②実行機能の下位要素間では逆唱と抑制課題のみ相関が有意、③非抑制課題・抑制課題では時期で有意差を認めたが逆唱では認めず実行機能の下位要素で発達経過に相違がある可能性、④言語課題ではひらがな直音の読み正確性は5歳児でほぼ獲得、⑤社会性課題は向社会行動が言語課題と相関が高く、言語指示の了解度の高さが向社会行動に影響する可能性を示唆、⑥仲間関係では実行機能課題である抑制課題、逆唱課題との相関が高い、といった事が明らかとなった。
5歳児において非認知的能力と認知的能力は相互かつ密接に関連しており、今後の縦断研究において今回の結果が有意義な先行知見となりうるであろう。