本研究では、自閉スペクトラム症(以下ASD)児と母親がどのようにナラティブの共同構成を行うか、大人のかかわり方によるASD児の共同構成の様子について検討することを目的とした。研究1として、言語や認知発達に遅れのないASD児(CA8:7~12:7)と母親10組を対象とし、アニメーション内容について共同構成を行う課題を実施した。その結果、6名の母親が精緻化スタイル(High-Elaborative Style)に、4名の母親が非精緻化スタイル(Low-Elaborative Style)に分類された。精緻化スタイルの母親と共同構成を行ったASD児は、非精緻化スタイルの母親と共同構成を行ったASD児よりも、1つの話題についてより長く、より詳細に語る様子がみられた。研究2では、研究1で非精緻化スタイルの母親と共同構成を行った4名のASD児に対し、調査者が精緻化スタイルでかかわりながら共同構成を行った。その結果、ASD児は母親との共同構成時に比べ、調査者との共同構成においてより長く詳細に語る変化がみられた。以上の点から、ASD児とのナラティブの共同構成を促進するために、大人の足場かけを行うかかわりが重要であるとともに、ASD児との関係性に基づいた支援が必要であると考えられた。また、ASD児の心理的な幸福感へ働きかける支援としてのナラティブの共同構成の意義について論じた。
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