発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
最新号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 氏家 靖浩, 南條 正人, 菊地 直子, 蘇武 迪子
    2024 年 5 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー
    我が国では小・中学生の30万人が不登校状態にあるという。この不登校は文部科学省の定義に基づき算定されているが、原則的には欠席日数だけに焦点が当てられており、不登校に至る要因も分類されてはいるが、現実には100例の不登校には100通りの欠席のきっかけとその後の経過があり、まさに個別の対応が求められることになる。だが、学校を長期に亘って欠席した中学3年生が5年を経て20歳になった時にどういった生活を過ごしているかをその本人に回答させた追跡研究によると、約7割は中学卒業後に信頼できる人に出会っており、約6割は学業や仕事を通じて自信を得ていた。これを踏まえて考えると、不登校の対応は心の問題として学校に戻すことが絶対であるとするよりも、進路形成の問題に置き換えたほうが有用ではないかと考えられるのであった。不登校への対応は学校に戻ることがすべてではなく、生涯発達の視点から見る発想の転換には、発達支援の関わりが思想として共有されていることが重要であると指摘した。
  • 保育の場で求められる支援と研究動向から見る課題
    角張 慶子
    2024 年 5 巻 1 号 p. 14-35
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では、保育の場における子育ての支援とりわけ在園する保護者の支援について論じることを目的とした。まずは、保育の場において求められていることを保育所保育指針等から導き、また支援者である保育者を養成する課程(カリキュラム)において求められていることを確認した。また、子育ての支援の目的として「子どもの育ち」および「親の育ち」の両方を支えるという2つの視点をもつ必要性について指摘した。さらに、現在の保育の場における保護者支援の課題の傾向と今後の研究・支援の方向性および必要性を探るべく、CiNii Researchを使用し「保育」「保護者支援」のキーワード検索で抽出された2018年から2024年に刊行された52編の研究を概観した。その結果、多様な支援ニーズへの対応、保育者の抱える困難感等の意識と支援者支援の必要性、保育者養成における創意工夫、保護者との連携における双方向の視点の必要性について考察された。
  • 李 熙馥, 本郷 一夫
    2024 年 5 巻 1 号 p. 36-51
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、自閉スペクトラム症(以下ASD)児と母親がどのようにナラティブの共同構成を行うか、大人のかかわり方によるASD児の共同構成の様子について検討することを目的とした。研究1として、言語や認知発達に遅れのないASD児(CA8:7~12:7)と母親10組を対象とし、アニメーション内容について共同構成を行う課題を実施した。その結果、6名の母親が精緻化スタイル(High-Elaborative Style)に、4名の母親が非精緻化スタイル(Low-Elaborative Style)に分類された。精緻化スタイルの母親と共同構成を行ったASD児は、非精緻化スタイルの母親と共同構成を行ったASD児よりも、1つの話題についてより長く、より詳細に語る様子がみられた。研究2では、研究1で非精緻化スタイルの母親と共同構成を行った4名のASD児に対し、調査者が精緻化スタイルでかかわりながら共同構成を行った。その結果、ASD児は母親との共同構成時に比べ、調査者との共同構成においてより長く詳細に語る変化がみられた。以上の点から、ASD児とのナラティブの共同構成を促進するために、大人の足場かけを行うかかわりが重要であるとともに、ASD児との関係性に基づいた支援が必要であると考えられた。また、ASD児の心理的な幸福感へ働きかける支援としてのナラティブの共同構成の意義について論じた。
feedback
Top