発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
3 巻, 1 号
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  • 発達理論と省察、枠組みの転換から
    山崎 晃
    2022 年 3 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、発達理論、発達段階に関する枠組みを持つことの意味、支援に関する省察、及び研究と実践について論ずることであった。支援に関する枠組みを持つこと、学習と教育との関係に関する理論、生態学的発達理論、関係論的発達理論、省察的実践に関する理論について解説した。また、発達支援における「最近接発達領域」と足場かけ・足場はずしの意味、振り返りと省察、〈行為における省察〉から〈行為の中の省察〉と制約、及び〈記述〉することの意味づけを行った。さらに、「プロフェッショナルが実践の中の研究者として機能するとき、実践そのものが再生の源泉となる。誤りを認めること、その結果として生じる不確実性は、自己防衛の機会ではなく、発見の源泉となり得る」(Schön, 1983)ことについて記述した。省察的実践家は、〈行為の中の省察〉により自らの枠を確認し、その上で事例に関するその枠の見直しなどを通して、新しい道を切り開いていくことが大切であること、クライアントとのコミュニケーションを通して枠組みを転換し、省察しながら実践を継続することが発達支援においても重要であることなどを述べた。
  • 杉山 弘子
    2022 年 3 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、集団保育の場における乳幼児期の子どもの発達支援の要点について考察することである。保育の場における発達支援の要点として、第1に、活動の主体としての子どもの発達を支援することをあげた。生活の場面では、自分でしたいという子どもの要求に大人が気づき、大人との共同を経て一人でできるようになっていく過程を支えること、遊びの場面では、子どもの主体性を尊重し、遊びのおもしろさと仲間関係を視野に入れた支援を行うことで、子どもは活動の主体として育っていけると考えられる。第2の要点として、仲間関係を育てることで一人ひとりの子どもの発達を支援することをあげた。仲間と遊ぶこと、仲間に受け入れられることは、子どもに情緒及び行動の安定をもたらす。また、話し合いができる仲間関係を築いていくことで、クラスが安心できる居場所になり、子どもたちは生活と遊びを充実させながら発達につながる経験を積み重ねていくことができるようになると考えられる。
  • 実行機能と向社会行動、言語発達の関連について
    川﨑 聡大, 森口 佑介, 松﨑 泰
    2022 年 3 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、近年幼児教育において重要視される「非認知的能力」に関して、認知的能力も含め包括的に5歳児(年長児)の実態を明らかにする事にある。非認知的能力は向社会行動と実行機能の二側面から、実行機能の指標としてサイモン・セッズ課題(抑制・非抑制)と逆唱課題を、社会性の指標として子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)の仲間関係と向社会行動を採用した。さらに、語彙・統語・ひらがな読み正確性を認知的能力として言語発達を包括的に評価し、非認知能力との関連を検討した。また5歳児の前半(7-8月)と後半(2月-3月)の時期の違いについても検討を行った(n=95)。 その結果、①逆唱は言語課題と、抑制課題では語彙、非抑制課題ではひらがな読み課題と相関が高い、②実行機能の下位要素間では逆唱と抑制課題のみ相関が有意、③非抑制課題・抑制課題では時期で有意差を認めたが逆唱では認めず実行機能の下位要素で発達経過に相違がある可能性、④言語課題ではひらがな直音の読み正確性は5歳児でほぼ獲得、⑤社会性課題は向社会行動が言語課題と相関が高く、言語指示の了解度の高さが向社会行動に影響する可能性を示唆、⑥仲間関係では実行機能課題である抑制課題、逆唱課題との相関が高い、といった事が明らかとなった。 5歳児において非認知的能力と認知的能力は相互かつ密接に関連しており、今後の縦断研究において今回の結果が有意義な先行知見となりうるであろう。
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