2026 年 8 巻 No.1 号 p. 24-42
2019年に日本では専門職大学(及び専門職短期大学)、中国では職業技術大学という学部レベルの学位が取できる高等教育機関が誕生し、規模を拡大させている。両者とも、「第四次産業革命」や「Society 5.0」の進展等による産業構造の転換に対応した専門職業人材の育成を目的として設置されたが、社会体制や経済戦略の違いから前者はサービス産業に、後者はマニュファクチャリングに重点を置いている。その役割の違いから両国が人材育成で互いに補完できる可能性がある。
日本の専門職大学と中国の職業技術大学との比較から
「第四次産業革命」や「Society 5.0」の進展等による社会経済の変化によって、既存の高度なスキル育成を担ってきた高等職業教育の役割にも変化が求められるようになった。この変化に呼応するかのように2019年に日本では専門職大学、中国では職業技術大学という学士の学位等が取得できる高等教育機関が誕生し、現在まで規模を拡大させている。日本では技能の獲得を目的とする専門学校と学術的知識に基づく学位が取得できる大学との両者のメリットを併せ持ち、理論と実践の両面で産業に貢献するハイレベル人材を育成する専門職大学の設置によって新しい産業で活躍したい若者にキャリアパスを提供できるようになった。中国では、2~3年間の短期高等教育において卒業資格に結びつくが、学位の取得に結びつかない高等職業教育が主に実施されていたが、職業技術大学の設置によって、高等職業教育において学部レベルの学位が取得できることとなり、普通教育よりも低位にあると社会的にみなされていた職業教育が、生徒や保護者にとって魅力ある進学先の1つとなった。
本稿では、日中で新たな高等職業教育機関がなぜ同時期に設置されたのか、また、両者の相違・相似点はどこにあるのか、さらに両者の比較や成立背景から、両者の交流可能性について検討する。
1.2 日本と中国における職業教育体系の比較日本と中国では、6-3-3-4制の学校教育体系を基本的にとっており(図1、2参照)、初等中等教育及び高等教育間での比較は容易である。職業教育は、両国とも後期中等段階から基本的に開始されるが、日本と中国で大きく異なる点は、日本の後期中等教育段階は普通教育と職業教育の隔てがなく、学校種として高等学校が存在し、同学校種内での普通教育を行う普通学科と専門教育を行う専門学科の区分によって普通教育と職業教育の違いが発生する点である。両者の間に隔てがないため、専門学科を主体とする学校に進学しても、高等教育への進学を目的とした課程を選択することで専門性を取得しつつ大学進学が可能となる柔軟性を有している。他方で、中国では、後期中等教育段階で、普通教育と職業教育の分岐が生じる。学校系統では、普通教育に基づく4年制大学に進学することを目的とした高級中学(原語:普通高中)と、職業教育を行う中等専門学校や職業中学等を含んだ中等職業学校(原語:ママ)の2つの系統に分かれ、原則、高等教育段階でもその分岐は続く。カリキュラムの違いから職業教育に進学した生徒は、職業技術学院や専科学校といった学位に結びつかない2~3年間の短期高等職業教育に進学せざるを得ず、後期中等教育段階で普通教育に進学するか、職業教育に進学するかで、その後の進路が決定してしまう。この固定した進路が、生徒個々人の能力開発の幅を狭めるとともに、社会的に職業教育は普通教育よりも低位に位置するという印象を強化して職業教育は社会的に不人気のままであった。
図1:日本の学校系統図

出典:文部科学省2025、「諸外国の教育統計R7(2027年版」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/syogaikoku/1415074_00023.htm)。
図2:中国の学校系統図
・2019年度より、大学制度の中に位置づけられ実践的な職業教育を行う
出典:文部科学省2025、「諸外国の教育統計R7(2027年版」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/syogaikoku/1415074_00023.htm)。
日中間に職業教育体系の相違が存在するが、2019年に日本では専門職大学(及び専門職短期大学)が、中国では、職業技術大学(もしくは職業大学)が成立した。前者は新しい学校種として学校教育法の改正に基づいて新しい制度の枠組みで設立され、後者は「中華人民共和国高等教育法」の枠内で既存の学校種の派生型として設立された。専門職大学は、社会や産業界の変化に対応した新たなモノやサービスを創造できる実践力と創造力を兼ね備えた人材を育成するため新たな枠組みの下で成立した。他方で職業技術大学は、第4次産業革命に伴う社会や産業界の変化に対応する高度人材育成に対応する必要とともに、後期中等教育段階以降の普通教育と職業教育の分離という問題を克服し、4年制で学部レベルの学位を取得できる職業教育系の大学として職業教育の地位向上と生徒や学生への多様な進路の提供を目的としている。そのため、職業技術大学は「中華人民共和国高等教育法」の改正による新たな学校種として規定されず、既存の高等教育機関の拡張として成立した。
2.1 専門職大学について専門職大学(及び専門職短期大学)は、文部科学省によると「『第四次産業革命』『Society 5.0』の進展と国際競争の激化に伴い,産業構造が急速に転換する中,優れた専門技能等をもって,新たな価値を創造することができる専門職業人材の養成」するために設置された新たな学校種である。同校で養成すべき専門職業人材は実践力と創造力を兼ね備え、「理論に裏付けられた高度な実践力を強みとして,専門業務を牽引できる人材+変化に対応しつつ,新たなモノやサービスを作り出すことができる人材」とされている。
参考:文部科学省ウェブサイト「専門職大学等の制度化について」(https://www.mext.go.jp/content/20210331-mxt_senmon01-100001385_01.pdf)、2025年4月15日閲覧。
各機関は、深く専門の学芸を教授研究し、専門職を担うための実践的かつ応用 的な能力を育成・展開することを目的としており、それ故、卒業単位の概ね3~4割以上が実習に当てられ、数か月の長期のインターンシップ等が必須とされる。また、必要専任教員数の概ね4割以上を実務家教員とし、原則40人以下の小規模授業を行い、指導教員と学生の距離が近いことで、学習・実習・就職活動などできめ細やかな個別指導を提供する。
専門職大学(及び専門職短期大学)のもう1つの特徴は、学位の授与である。「課程修了者には、文部科学大臣が定める学位を授与する」とされており、「学士(専門職)」又は「短期大学士(専門職)」と「専門職」と明示された学位が授与される。教育課程については、産業界等と連携した課程を編成・実施し、教員の任用・資質向上において関連する事業を行う者等の協力を得るとされており、常に最新の情報にアップデートされる。同時に産業界等と連携した認証評価の体制を整備して、専門分野の特性に応じた評価を受けるなど、産業界の動きと連動した人材育成を可能としている。また、産業界のリスキリングやアップスキリングの需要に応えるために、社会人が学びやすい仕組みを備えており、専門職大学(4年制)の課程は、前期(2年又は3年)及び後期(2年又は1年)に区分できるとともに、実務経験を一定期間の修業年限に通算できる。
専門職大学等の設置状況
| 区分 | 専門職大学 | 専門職短期大学 | 専門職学科 |
|---|---|---|---|
| 公立 | 3校 | 1校 | 0学科 |
| 私立 | 16校 | 2校 | 1学科 |
| 合計 | 19校 | 3校 | 1学科 |
出典: 文部科学省ウェブサイト「専門職大学等について(パンフレット)」https://www.mext.go.jp/content/20250403-mxt_senmon02-100001394-2.pdf、2025年4月15日閲覧。
2.2 専門職大学の具体的な教育活動本項では、筆者が訪問調査した専門職大学(及び専門職短期大学)の事例を紹介する。
2.2.1 国際ファッション専門職大学国際ファッション専門職大学は、2017年の学校教育法改正後、最初に設置された専門職大学であり2019年4月に開講した。同大学の運営母体は日本教育財団であり、同財団は元々ファッション系の専門学校を運営していたことから、その資源を流用して専門職大学を設立した。同大学を設置した理由は、学生に高度なスキルの取得を求めるのではなく、文化人類学、ジェンダー、パフォーマンスアートなどの学術面での教育を提供し、産業の複雑化に対応した理論と実践を併せ持つ人材を育成するためであった。卒業までの必要単位は126単位で、そのうち46単位は比較文化、匠の世界などの選択科である。座学で必要とされる単位数は90で、それ以外は実習で取得する。東京、大阪、名古屋の3つのキャンパスを持ち、教員総数は約50名、学生定員数は約800人(2025年度の在学者数は661人)で、基本的に40人以下の学級制をとり、1年次からゼミに入り、ゼミには4~5名の教師がつく。3年次には3か月以上のインターンシップなどの海外実習が、卒業前にはフィールドワークが必須とされるなど、実践力を重視し、就職保障100%を打ち出している。また、産業界との連携が緊密であることから多数の実務家教員を配置している。実務家教員は法令上5年以上と定められているが、同校では、教授は30年以上, 準教授25年は以上,講師は15年以上の実務歴を必要とされる。
2.2.2 東京国際工科専門職大学2020年に設立された東京国際工科専門職大学は、上述の国際ファッション専門職大学の東京キャンパスと同一の建物内に位置しており、情報工学やロボティクスなどのデジタル工学系を主眼とする専門職大学である。同大学は、工科学部の下に、情報工学科とデジタルエンタティンメント学科の2つを有し、定員数は800名であるが、2025年5月現在の在籍者数は902名(情報工学科521名、デジタルエンタティンメント学科381名)となっている。1年次は共通の基礎科目を学習し、2年次から専門のコースに分かれるコース制をとっている。情報工学科では、2年次にAI戦略コース、ロボット開発コース、IoTシステムコースに分かれ、デジタルエンタティンメント学科ではCGアニメーションコース、ゲームプロデュースコースに分かれる。グローバルスタンダードに対応した人材育成を目標としており、4年間を通じた英語のコミュニケーションスキル修得が必須で、AmazonやGoogleでの講義や会議に参加したり、米・英・カナダのIT企業等で研修・インターンシップをしたりするなど、英語力の急激な上昇を促すカリキュラムとなっている。実践力の向上のために、4年間の半数が演習・実習に当てられており、2年次から卒業までに臨地実務実習(累計600時間)の中で、4か月間の長期企業インターンなどが行われる。在学中から実務と連携した実習が行われ、例えば、行政と連携したシステム開発実習で、自治体の要請に基づいたまたメタバースハローワークを開発したり、オンラインゲーム『フォートナイト』の岐阜城版を制作したりしている。そのほか、校内コンテストによるゲーム開発やIoTによる車内幼児置き去り検知センサーの開発など、学生の意欲を向上させる教育を実施しており、就職率100%を達成している。
2.2.3 東京保健医療専門職大学2020年に開学した東京保健医療専門職大学は、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)の育成を行っており、リハビリテーション学部の下に、理学療法学科及び作業療法学科の2つの学科をもち、総定員数は640名(2025年5月1現在総在籍者数435名)である。2025年現在1都3県で唯一の医療系専門職大学であり、PT、OTの国家資格の取得が教育の目標となっているため、40人を学級単位とした担任制をとり、きめ細やかな指導を行うことで1年次からの学習習慣の形成を行うカリキュラムを実施している。同大学が設置された背景としてはPT及びOTの国家資格試験が1966年に開始されてから時間がたち、専門性が確立された一方で、30~40代のシニア以降のキャリア形成が課題となっていたからである。シニア以降に現場を支える経営、マーケティング、マネージメント、起業を行える人材を育成するため、同大学は業界の意向を反映させて設立された。教育の内容は技能の獲得だけでなく社会課題を解決できる療法士の育成に重点をおいており、スポーツトレーニングなどのスポーツ支援、ヘルスケア、VRやロボティクスなどを用いたリハビリ用先進テクノロジー、経営などの教育を提供している。1年次から連携している医療機関において1週間の見学実習を行い、4年次の8週間以上にわたる総合演習まで、各学年で実践的実習が組まれており、特に経営分野では、連携している医療機関など経営マネージメント・事業戦略開発などを学習する。
2.2.4 iU(情報経営イノベーション専門職大学)2020年に東京都墨田区で開学したiU(情報経営イノベーション専門職大学)は、就職よりも起業する人材の育成に焦点を当てた専門職大学である。同大学は情報経営イノベーション学部・情報経営イノベーション学科のみを設置し、「ICTテクノロジーやビジネススキルで社会課題を解決する」人材を育成するためにICT、ビジネス、グローバルコミュニケーションの3つの分野の教育を行っている。多くの連携企業や客員教員による起業塾、学生に対する資金・バックオフィスの提供が行われ、在学中からベンチャーのための実践的な学習を実施している。卒業生の起業率は国内トップレベルであり、2023年度の起業社数は全国6位の31社(1~5位は大阪大学、慶應義塾大学、東京大学など)、学生数あたりの起業実績は4.17%(学生数744人中31社起業)となっている。経営者、起業家、投資家、エンジニアとして活躍する客員教員数は1,176人を誇り、彼らによる演習は学生にとって現在進行形のベンチャーを経験する機会となるとともに、経営者側にとっては人材発掘の場となっている。また、近隣の企業などへの600時間(4か月)のインターンが必修となっており、2024年度の就職内定率は97.5%を達成している。
2.2.5 ヤマザキ動物看護専門職短期大学ヤマザキ動物看護専門職短期大学は2019年に開学した日本で初めての専門職短期大学である。母体は、ヤマザキ動物看護大学(4年制), ヤマザキ動物看護専門職短期大学(3年制), ヤマザキ動物専門学校(2年制)を有する学校法人ヤマザキ学園であり、58年前に開設した専門学校を起源としている。同短期大学は、2019年6月にアジア初の「愛玩動物看護師法」が可決され、2022年5月から愛玩動物看護士が国家資格化されることと、ペット市場の拡大・質の向上により、製品開発・企画などができる学術知識を持ったハイレベル人材が必要となったことを背景として開設された。実務能力を獲得する教育を重視しており、専任教員の4割以上が実務経験を持ち、実務家教員の半数が研究能力を有している。短期高等教育としての3年間で、卒業までに取得すべき107単位のうち30単位が実習となっており、3年間の総実習時間は900時間である。そのうち半分の450時間が動物病院、企業、保険会社、ペットサロンなどでの学外インターンであり、その経験を通じて学生は将来のキャリアの方向性を見出すことが可能である。また、学内には動物病院、ペットサロン、訓練施設が敷設されており、学生が実習に参加しやすい環境を整えている。国家資格を取得することを目指した課程がコアカリキュラムであり、卒業時には短期大学士(専門職)の学位を獲得する。


以上の事例から見ると、2019年以降に設置された専門職大学(及び専門職短期大学)は、ファッション、デジタル、リハビリテーション、ベンチャー、ペットなどのサービス業で新たな価値を生み出す、創造的で実践的に活躍できる人材の育成を目指している。これはマニュファクチャリングから消費中心のサービス産業への転換やそれに伴うマーケットの変化に対応したものであり、日本の産業構造の変化に合わせた高度人材の育成を目的としたものであった。専門職大学の設置は日本の経済構造の遷移を表象したものであり、高等職業教育が市場の変化に合わせて柔軟に新たなセクターを創出したといえる。
日本で専門職大学・専門職短期大学が創設された2019年に、中国では新たな高等教育機関として職業技術大学(もしくは職業大学)が設置された。これは、2010年代に入り経済社会の発展や産業構造の転換に対応するため職業教育の強化が必要になったからであった。特に2015年に公表され、2025年までに世界の製造強国への仲間入りを目指す政策「中国製造2025」にみられるように「製造大国」から「製造強国」への転換により労働集約型から技術集約型の製造業への転換を掲げた中国において、既存の高等職業教育を超える高度なスキルを教育できる職業教育が必要となった。内閣にあたる国務院は現代社会により適応した職業教育を促進させる決定(「加快発展現代職業教育的決定」)を2014年5月に発表し、同年6月には「現代職業教育体系建設計画(2014~2020年)」を公表した。これらの政策では、中等教育段階から専門職の修士課程までを通じた現代的な職業教育を形成しようとしており,特に職業高等教育機関の質向上に焦点があてられた。この改革に対して教育部は当初、1999年以降の高等教育の規模拡大期に新設された地方4年制大学の一部を実践的な職業教育を行う応用技術型大学に転換する政策をとって対応した。応用技術型大学は、2013年に天津職業技術師範大学が発起人となった35校を束ねる応用技術大学(学院)連盟の結成など、地方レベルで一定程度拡大したが、職業教育を普通教育よりも下位に見る社会の認識から、既存の4年制大学は応用技術大学化を格落ちと考え、大きく普及することはなかった。しかし、急速な技術革新により情報通信や集積回路、AI、IoT、ロボティクスなどの新しい産業に対応できる人材の育成が南部などのハイテク産業地域で大量に必要となり、ハイレベルの高等職業教育機関の設置が求められていた。2019年1月、国務院は「国家職業教育改革実施プラン」を公表し、普通教育を行う高等教育機関と高等職業教育機関を同等と位置づけ、同年4月には教育部及び財政部によって50校のハイレベルな高等職業教育機関と150のハイレベルな専門分野を構築する「中国の特色あるハイレベルの高等職業教育及び専門分野の構築を実施することに関する意見(通称:「双高計画」)」が公表されるなど、高等職業教育の高度化を進めた。学位の取得を重視する社会通念の中、学位に結びつかない短期高等教育であったことが、ハイレベルな高等職業教育を実施する上での課題であったことから、政府は、学位に結びつく学部レベルの教育を提供する新しいタイプの大学である職業技術大学の設置を2019年から開始した。
3.2 職業技術大学の特徴職業技術大学は、基本的に短期の高等教育課程である専科課程を提供していた高等職業教育機関が昇格したものであるが、本科レベルの教育を提供しており、普通教育を行う大学と同等の学位を授与する点で、既存の大学と同等である。規模の大きな高等職業教育機関の中には、学位に結びつく教育を提供できる本科レベルの大学に昇格したいと考えるものがあり、それらが2019年以降に職業技術大学に転換していった。2014年6月に公表された「現代職業教育体系建設計画(2014~2020年)」では,原則,短期の職業高等教育機関が本科レベルの昇格することを許可していなかったため,2019年当初は、公財政を使用しない私立の職業教育機関である15校が実験的に短期高等教育機関から本科レベルに昇格し(表1参照)、その際、政府は,大学の名称として「職業大学」を校名に含めることを要求したことで,本科レベルとなった大学は,「職業技術大学」若しくは「職業大学」と新たに名乗ることとなった。
表1:職業技術大学の設置:2019年に本科レベルに昇格した15校
| No. | 変更前の機関名 | 変更後の機関名(英文名) |
| 1 | 南昌職業学院 | 南昌職業大学(Nanchang Vocational University) |
| 2 | 江西先鋒ソフトウェア職業技術学院 | 江西ソフトウェア職業技術大学(Jiangxi Software Vocational University of Technology) |
| 3 | 泉州理工職業学院 | 泉州職業技術大学(Quanzhou Vocational and Technical Univeristy) |
| 4 | 山東外国語職業学院 | 山東外国語職業技術大学(Shandong Vocatinal and Technical University of International Studies) |
| 5 | 山東凱文科技職業学院 | 山東エンジニアリング職業技術大学(Shandong Vocational and Technical University of Engineering) |
| 6 | 山東外事翻訳職業学院 | 山東外事職業大学(Shandong Vocational University of Foreign Affairs) |
| 7 | 周口科技職業学院 | 河南科技職業大学(Henan Vocational University of Science and Technology) |
| 8 | 広東工商職業学院 | 広東工商職業技術大学(Guangdong Business and Technology University) |
| 9 | 広州科技職業技術学院 | 広州科技職業技術大学(Guangzhou Vocational and Technical University of Science and Technology) |
| 10 | 広西都市職業学院 | 広西都市職業大学(Guangxi City Vocational University) |
| 11 | 海南科技職業学院 | 海南科技職業大学(Hainan Vocational University of Science and Technology) |
| 12 | 重慶機械電力職業技術学院 | 重慶機械電力職業技術大学(Chongqing Vocational and Technical University of Mechatronics ) |
| 13 | 成都芸術職業学院 | 成都芸術職業大学(Chengdu Vocational University of the Arts) |
| 14 | 陝西電子科技職業学院 | 西安情報職業技術大学(Xi'an Vocational University of Information) |
| 15 | 西安自動車科技職業学院 | 西安自動車職業大学(Xi'an Vocational University of Automobile) |
参考:中国中央テレビウェブサイト「15所職業学院昇為“職業大学”考本科有了更多選択」(http://news.cctv.com) 2019年6月4日。
職業技術大学の設置は、教育関連法令の改正を促すこととなった。「中華人民共和国職業教育法」が2022年に改正され、その第2章第15条で「高等職業学校教育は、専科、本科及びそれ以上の教育レベルの高等職業教育機関及び普通教育を行う高等教育機関が実施する。」と規定され、本科レベルの高等職業教育機関の位置づけが明確になった。同時に2024年に制定された「中華人民共和国学位法」では、第4章第19条では、次のとおり規定した。
学部レベルの教育を受けて、規定の課程審査を通過あるいは相応の単位を取得し、卒業論文あるいは卒業設計等の卒業に関連する審査に通過し、学位申請者が以下のレベルに達していると表明すれば、学士の学位を授与する。
(1)当該学科あるいは専門分野領域で基礎理論、専門知識及び基本技能を比較的良好に把握していること。
(2)学術研究あるいは専門の実践的業務に従事する上で初歩の能力を有すること。
下線で示したように、学位取得において論文の審査が必須でなくなり、職業上の実践的な能力を証明することで学士学位が取得できるようになった。
職業技術大学で行われる教育は、短期高等職業教育機関である専科学校及び職業技術学院の専門科目と実習を主体とした教育内容を延長したものではなく、本科1年及び2年目で学生は数学、物理、英語などの基礎課程及び基礎専門課程を学び、専門科目においても主要科目以外の関連分野について学習するなど、基礎分野を含んだ複合的な教育内容を提供している。ただし、実践的な科目を学習する際に、50%以上を実習の時間に充てており、この点が普通教育を行う大学と異なっている。 また、2021年に教育部が公表した「本科レベルの職業教育専門分野設置管理規則(試行)」によると、職業技術大学は修士以上の学位を有する教員を全体の50%、博士学位を取得した教員を全体の15%以上、普通教育と職業教育の双方を教育できる「双師型」教師を50%以上配置するとされており、学術と実践の両者を高いレベルで教育できる教員を揃えている。また、地域の産業に貢献するハイレベル職業人材「産教融合」型の地元企業などと連携した実習を行っている。このようにハイレベルで学位の取得に結びつく高等職業教育が成立したことで、職業教育の人気が向上し、2024年5月までに職業技術大学の総数が51校にまで拡大し(表2、3参照)、さらに浙江省、山東省、福建省などの中等職業教育段階では、普通教育と職業教育の両者を融合させ、学位に結びつく高等教育への進学を目的とした「職普融通教育」が拡大している。
表2:職業技術大学の新設数・募集人数・在学者数
| 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
新設数 (運営方法) |
15(全て私立) | 7(私立6、公立1) | 10(私立1、公立9) | 1(公立) | 18(私立1、公立17) | |
|
本科課程 募集人数 |
4万1,400人 | 7万6,300人 | 8万9,900人 | |||
| 在学者数 | 12万9,300人 | 22万8,700人 |
表3:2024年5月に教育部が新設を承認した職業技術大学
| 機関名 | 原機関名 | 運営方法 | 登録地域(部門) | 双高計画参加有無 |
|---|---|---|---|---|
| 漯河食品工程職業大学 | 漯河食品職業学院 | 私立 | 河南省 | × |
| 金華職業技術大学 | 金華職業技術学院 | 公立 | 浙江省 | 〇 |
| 青海職業技術大学 | 青海交通職業技術学院 | 公立 | 青海省 | × |
| 江西職業技術大学 | 九江職業技術学院 | 公立 | 江西省 | 〇 |
| ハルビン職業技術大学 | ハルビン職業技術学院 | 公立 | 黒竜江省 | 〇 |
| 柳州職業技術大学 | 柳州職業技術学院 | 公立 | 広西チワン族自治区 | 〇 |
| 浙江機電職業技術大学 | 浙江機電職業技術学院 | 公立 | 浙江省 | 〇 |
| 南寧職業技術大学 | 南寧職業技術学院 | 公立 | 広西チワン族自治区 | 〇 |
| 重慶電子科技職業大学 | 重慶電子工程職業学院 | 公立 | 重慶市 | 〇 |
| 甘粛林業職業技術大学 | 甘粛林業職業技術学院 | 公立 | 甘粛省 | × |
| 唐山工業職業技術大学 | 唐山工業職業技術学院 | 公立 | 河北省 | 〇 |
| 広東軽工職業技術大学 | 広東軽工職業技術学院 | 公立 | 広東省 | 〇 |
| 貴州交通職業大学 | 貴州交通職業技術学院 | 公立 | 貴州省 | 〇 |
| 湖南汽車工程職業大学 | 湖南汽車工程職業学院 | 公立 | 湖南省 | 〇 |
| 民政職業大学 | 北京社会管理職業学院 | 公立 | 民生部 | × |
| 新疆農業職業技術大学 | 新疆農業職業技術学院 | 公立 | 新疆ウイグル自治区 | 〇 |
ベトナム戦争帰りの前学長の強い個性によるキャンパスの設計が特徴的で、4階建ての校舎には車両2台が並走できるほどの通路を各階に設けており、各階はスロープでつながっているため、車両で校内のどこにでも移動できる。また、職業教育の基本は体力であるとの考えから、毎朝6時に全学生・教職員対象のマラソンが必須となっており、雨天でも校舎の通路を用いてマラソンが実施されるため、マラソン競技において何度も優勝する強豪校である。そのほか、キャンパス全体にグリーン建築の概念を取り入れており、各階外壁に木々を植樹し、そこに外壁に張り巡らされた散水パイプから地下水が一定時間噴霧されることで、亜熱帯の気候にもかかわらず、冷房の必要ない屋内環境が整備されている。
本稿は2019年に初めて創設されて以降、日中両国で規模が拡大している高等職業教育機関に焦点を当てた。日本における専門職大学(及び専門職短期大学)と中国における職業技術大学は産業構造、社会環境の変化に対応した職業教育を提供するために同時期に設置された。これは、職業教育が技能の習得だけではなく、イノベーションに対処するための理論の学習が不可欠となってきたことに起因する。社会課題の解決、起業、マネージメント等に対応できるスキル+理論を学ぶ学部レベルの職業教育の必要性が急速に拡大し、新しい高等職業教育機関が誕生した。ただし、専門職大学及び職業技術大学は両国の産業構造に従属しており、専門職大学ではICT、医療・介護、服飾デザイン、ペットなどのサービス業に重点が置かれており、職業技術大学では「中国製造2025」などの政策から、マニュファクチャリングに重点が置かれている。また、日本では新たな学校種として専門職大学が創設され、中国では、学位に結びつく従来の大学と同様のプレステージを与えるために既存の高等教育の枠組みを拡張することで成立した。同時期に新たな高等職業教育機関が生まれたことは、両国が同様の産業構造及び市場の変化を経験していることになるが、他方で、日本と中国では異なる業種が高等職業教育と結びついていることから、その相違を利用した高等職業教育の交流強化が可能ではないかと考える。日本はサービス産業人材の育成において中国からの留学生の受け入れや人材育成方法の輸出を行い、中国は職業技術大学で育成された人材と日本企業との連携強化や日本から人材を派遣してのリスキリングやアップスキリングの実施などによる交流強化が期待できる。専門職大学と職業技術大学の交流によりハイレベル職業人材を相互補完できるかもしれず、両国間での職業教育の交流の益々の発展が期待される。
注:本稿は、文部科学省を代表するものではない。
本稿をまとめるにあたり、日本教育財団後藤京子理事・豊田洋平部長・下嶽純世氏・熊琴氏、国際ファッション専門職大学近藤誠一学長・小柳將和アドミッションセンター長、東京国際工科専門職大学酒井隆行主任、東京保健医療専門職大学古尾谷博次学長・飛松好子前学長・小杉泰輔事務局長、iU(情報経営イノベーション専門職大学)中村伊知哉学長・阿部川久広学部長・稲岡克彦ユニット長・江端浩人教授・加藤大翔学生募集担当リーダー、ヤマザキ動物看護専門職短期大学山崎薫理事長、泉州職業技術大学呉濱如学長、厦門大学教育研究院鮑威教授等の様々な方にご支援・ご協力いただいた。ここに心からの感謝を申し上げる。