抄録
衛星光学センサ画像を用いた建物被害把握は,これまでに数多く行われてきたが,直下視による衛星画像からは建物上面しか観察できないため,中間層倒壊などの被害を判読することが困難であった.そこで本研究では,地震前後画像から建物の影の長さを計測することで建物高さを求め,それらの差分から倒壊などの大被害を把握することを試みた.2003年アルジェリア地震において多数の建物被害が発生したBourmerdes市を対象として,地震前後に観測された QuickBird衛星を使用した.その結果,目視により大きな被害を判読できたかった幾つかの建物について,高さの変化により倒壊と判断することができた.しかし,建物が密集していたり周囲に障害物があるような場合では,影長さの計測が困難であった.また,影計測が不可能な曇天時や夜間における建物高さの推定法として,SAR強度画像上の建物の倒れ込み長を計測し,建物高さを求める検討も行った.その結果,画像分解能の制約から建物倒壊の把握という点では課題があるもののその有効性が示された.