人命救助に関して,地震災害では,消防・警察・自衛隊などを中心に倒壊家屋からの救助活動が多数行われている.巨大地震が発生した場合,地域住民による人命救助活動が重要な役割を果たすことは言うまでもない.しかし,適切な救助・救出知識を身につけられる住民に対しての訓練プログラムがないにもかかわらず,過去の地震災害で住民が救助活動を行っているという点で,ギャップが存在する.本研究では,1995年兵庫県南部地震と2016年熊本地震の捜索救助活動を対象とし,どのような状況下において住民が救助活動を行ったのか,訓練を受けた救助の実動機関と相対的に整理した上で,危険度や救助時間に関する実態を示すことを目的とする.住民による救助活動について複数の調査結果を融合し分析した結果,全壊建物での救助活動に対して,救助の実動機関だけではなく,住民も行ったことが確認され,訓練を受けていない住民が対応するには危険すぎる現場で活動していたことが明らかになり,住民に対する救助訓練プログラムの必要性が確認された.
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