日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
特集号: 日本地震工学会論文集
25 巻, 10 号
特集号「第16回日本地震工学シンポジウム 災害対応訓練のあり方に関する検討」
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
巻頭言
論文
  • ―「要救助者下部側の破壊・押下げ」に係る基本的力学性状の把握―
    印南 千尋, 加古 嘉信, 玉木 慎吾, 宮里 直也
    2025 年25 巻10 号 p. 10_2-10_11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    地震により倒壊した家屋からの人命救助活動の向上に向け,消防,警察等の救助機関において,倒壊家屋内で梁等の下敷きとなっている要救助者の挟圧解除を迅速・的確に行うための検討・検証が進められている.本研究では,2016年熊本地震以降に有効性が確認された「要救助者下部側の破壊・押下げ」による挟圧解除手法について,要救助者周辺の床版の基本的力学性状(床版の剛性)の把握を目的とする実証実験を行った.その結果,救助実務の向上に有用と考えられる知見を5点整理することができた.また,本研究を通じて開発した実験方法(試験治具,実験手順等)は,今後の更なる検討・検証推進に有用な知見を提供するものと考えられ,地震倒壊家屋による人的被害軽減への寄与が期待される.

  • 四井 早紀, 片寄 圭一郎, 村上 ひとみ, 中嶋 唯貴, 小山 真紀
    2025 年25 巻10 号 p. 10_12-10_24
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    人命救助に関して,地震災害では,消防・警察・自衛隊などを中心に倒壊家屋からの救助活動が多数行われている.巨大地震が発生した場合,地域住民による人命救助活動が重要な役割を果たすことは言うまでもない.しかし,適切な救助・救出知識を身につけられる住民に対しての訓練プログラムがないにもかかわらず,過去の地震災害で住民が救助活動を行っているという点で,ギャップが存在する.本研究では,1995年兵庫県南部地震と2016年熊本地震の捜索救助活動を対象とし,どのような状況下において住民が救助活動を行ったのか,訓練を受けた救助の実動機関と相対的に整理した上で,危険度や救助時間に関する実態を示すことを目的とする.住民による救助活動について複数の調査結果を融合し分析した結果,全壊建物での救助活動に対して,救助の実動機関だけではなく,住民も行ったことが確認され,訓練を受けていない住民が対応するには危険すぎる現場で活動していたことが明らかになり,住民に対する救助訓練プログラムの必要性が確認された.

  • 伊藤 映美, 伊藤 嘉信, 片岡 克己, 沼田 宗純
    2025 年25 巻10 号 p. 10_25-10_38
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    大規模災害発生時は医療従事者が不足するため,地域住民による救助・救護が重要となる.本研究では,被災住民同士で負傷者の命を繋げることを目的に,「市民向け救助・救護トレーニングプログラム」を構築した.これを東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンターの研修で実施し,アンケートと演習の録音データを解析した.その結果,参加者は実践的な訓練を求めており,「情報収集・管理」「負傷者探索」「応急手当」など技術的活動の習得は難しく,安心の「声掛け」は比較的実践しやすいことが示唆された.

報告
  • ~要救助者の下部側に空間を確保する手法の有効性に関する技術的検討~
    加古 嘉信, 中村 昇一, 吉岡 利征, 山根 寛隆, 印南 千尋, 玉木 信吾, 宮里 直也
    2025 年25 巻10 号 p. 10_39-10_51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    地震による倒壊建物内の要救助者は,崩落した梁等に挟圧される可能性が高く,特に胸腹部を圧迫されて呼吸抑制を受けている場合には,一刻も早く狭圧解除を達成することが求められる.しかしこれまで,全国の救助機関において,その挟圧を解除する手法に関する技術的検討が十分に行われてきていない.本研究では,2016年熊本地震における救助実態データを基に,兵庫県下の消防救助隊員による実証的検討を行い,挟圧解除手法に関する技術的知見の整理を行った.一般的な手法(「圧迫物の挙上」または「圧迫物の切除」)と比較して,これまで検証されてこなかった「要救助者下部側の空間確保」が迅速性・効率性に優れており,かつ高度な救助資機材が不要で汎用性が高いことが示された.今後,この手法の普及と技術向上が期待される.

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