日本地震工学会論文集
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論文
強震動予測のための地震動と微動を用いた京都盆地速度構造モデルの拡散波動場理論による同定に関する研究
吹原 慧松島 信一川瀬 博
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2015 年 15 巻 6 号 p. 6_60-6_76

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抄録

現在、地下構造のモデル化に対しては多くの検討がなされている一方で、既存の地下構造モデルに対する、地震動や微動の観測データを基にした検証はいまだ不十分であり、地震動や微動の観測データに基づいた地盤構造の同定とそのモデルの考察が必要とされている。そこで本研究ではまず、京都盆地上に位置する京都市を対象地域とし、京都市の消防署各所に設置された地震計から得た地震動観測水平上下スペクトル比(HVR)を対象に、拡散波動場理論に基づく理論計算とハイブリッドヒューリスティック探索法により地盤構造の同定を行った。次に、広域強震動予測をすることを考えた場合、地盤構造モデルは個別速度構造よりも、同一速度構造の方が扱いやすいという観点から、地震観測点で同定した地盤構造に基づいて同一速度構造モデルを作成し、京都市内で行った微動観測点において微動理論HVRと微動観測HVRの一次ピーク振動数の比較を行い、振動数比により深部地盤の層厚を増減することにより、深部地盤の構造をよく反映したモデルが修正できた。修正された同一速度構造モデルは既存の京都盆地地下構造モデルとよい相関を示し、また、観測地震動を用いて再現した速度波形と観測波形との比較も良好であったことから、本研究で用いた同定方法の有用性を確認することができた。

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© 2015 一般社団法人 日本地震工学会
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