日本地震工学会論文集
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論文
偏心建物のグリーン関数に対する風とデータ長の影響の検討と回転に関するグリーン関数の補正
八杉 信行羽田 浩二堀家 正則
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2016 年 16 巻 1 号 p. 1_139-1_150

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抄録

建物振動のグリーン関数(インパルス応答関数)が精度よく推定できると、建物応答計算や耐震診断に利用でき、その価値は大きい。しかし、精度も信頼性も高いグリーン関数の推定には3つの問題を克服する必要がある。1つ目は、偏心建物の微動観測記録からグリーン関数を推定する際に、基礎階の回転入力の低周波数成分不足により回転に関するグリーン関数の波形に低周波数ノイズによる歪みが生じる問題である。この歪みを補正するため、グリーン関数の信号と考えられる周波数帯以外の周波数成分をもつ無相関ノイズを回転入力に加える方法を提案する。この方法により、回転に関するグリーン関数の低周波数ノイズを除去することができる。2つ目は、建物の微小振動に対する風入力と微動入力の影響について検討することである。建物の微動平均振幅と平均風速及び建物近傍地盤の微動平均振幅を比較した結果、建物の微動平均振幅の変動は平均風速でなく地盤の微動平均振幅の変動と一致する。また、平均風速が大きい時間帯のグリーン関数と小さい時間帯のグリーン関数の比較を行った結果、両者はほぼ同じである。これは平均風速が2m/s程度以下、入力微動が0.002cm/s2程度以上ではグリーン関数の推定には風入力はほとんど影響しないことを示している。3つ目は、解析データ長の問題である。30分間の観測記録から推定したグリーン関数10個の平均値を基準として2個から8個のグリーン関数を平均化したものとの差を評価する。その結果、6個(3時間)であれば、誤差は30分間の観測記録から推定したグリーン関数に比べて3分の1程度に減少し、それ以降は緩やかに減少する。以上の結果から、観測時間は3時間以上が良いと考えられる。現実には微動入力が安定しているのは23時から5時程度の場合が多いため、その時間のデータを全て使うのが良いと考えるが、条件によっては3時間程度でも良いのかもしれない。

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© 2016 一般社団法人 日本地震工学会
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