2025 年 25 巻 1 号 p. 1_1-1_12
柏崎刈羽原子力発電所で行われている地表稠密アレイ,鉛直アレイ,深さ1kmを超す大深度観測で得られたデータを用いて,敷地近傍の小規模地震による地震波の伝播性状を分析した.P波,S波の初動部が敷地を通過する速度と鉛直アレイを通過する時間は,敷地への入射角と関係しており,地盤深部からの3次元的伝播が確認できた.大深度観測記録で見ると,長周期成分が小さく短周期の卓越するMj2クラスの地震波形では,地表からの反射波が不明瞭で明瞭な後続波は見いだせない.一方,Mj4クラスの地震波形では,地表からの反射波に加え,S波到達後6~7秒後に実体波的な伝播を示す明瞭な後続波群が確認された.また,地表アレイ記録と鉛直アレイ記録から,表層の空間的に狭い範囲でトラップされたと考えられる表面波群も確認された.三次元的な地震観測点の配置が,地震波の伝播性状の理解には有効である.