日本地震工学会論文集
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論文
長周期後続波を含む広帯域の波形合成のための経験的グリーン関数法に関する研究
春日井 秀俊久田 嘉章田中 信也
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2025 年 25 巻 1 号 p. 1_284-1_294

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抄録

近年我が国では強震観測網の充実により膨大な地震観測記録が蓄積されており,経験的グリーン関数法(Empirical Green's Function Method, 以下,EGF法)のより有効な活用が期待できる.しかしながら,従来のEGF法では,主に実体波を対象とした短周期地震動の活用例が多く,表面波を含む広帯域地震動への適用に関する研究や活用例はあまり多くはない.その際,ランダム性状の短周期の実体波と,コヒーレント性状の長周期の表面波では要素波形の重ね合わせによる振幅特性が大きく異なることに注意が必要になる.本研究では,余震記録が豊富に得られている2000年鳥取県西部地震を対象として,表面波を含む広帯域の本震波形の再現を行い,波形合成の際の注意点を調べた.規模の異なる2つの要素地震を選定し,2つの強震動生成域(Strong Motion Generation Area:以下,SMGA)への割り当てと破壊伝播形式を変えた4つのCaseの震源モデルを用いてシミュレーションを行った.遠方の観測点で長周期の後続波を合成するには,地震規模が大きくS/N比の良好な要素地震の記録を使用する必要があり,SMGAの要素分割数が少なくなるCaseも検討した.その結果,断層面での破壊形式や破壊伝播方向の違いなどにより,要素地震波の合成時に異なる時間ずれが生じ,特に長周期の後続波の振幅の結果に大きな違いが生じることを確認した.

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