日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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増幅スペクトルを評価するための浅部S波速度構造のモデル化-大阪湾岸部-
長 郁夫趙 伯明香川 敬生
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2005 年 5 巻 1 号 p. 1-16

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抄録
増幅スペクトルの面的評価に用いる浅部S波速度構造の3次元モデルを構築するための効果的なアプローチを提案する。アプローチの骨子は次の通りである。まず、面的に密に存在する地層境界深度データに基づいて地質層の成層構造における層境界深度モデルを作成する。それを物性値の層境界深度モデルとみなす。この時、浅部地質の層区分と物性値の層区分は良く対応し、各層内の物性は場所により変化しないという仮定が妥当とみなせるようにモデル化対象領域を限る必要がある。次に、まばらに存在するPS検層による詳細な速度構造を用いて計算される理論的増幅スペクトルが良く再現されるように各層の物性値をモデル化する。本報告では、大阪湾岸部の浅部S波速度構造の一般的な特徴を表現する単純なモデルの構築を試みる。それゆえ、理論的増幅スペクトルの評価には最も単純な理論すなわちSH波重複反射理論 (線形) を用いる。具体的な手順は次の通りである。まず同地域の浅部地盤を (1) 盛土・埋立層、(2) 沖積層 (Ma13層が主体)、(3) 洪積砂礫層 (第一洪積砂礫層、Dg1層)、(4) 洪積粘土層 (Ma12層) に分割する。面的に密なボーリングデータにより同定されている1-4層境界深度の3次元分布をそのまま物性値の層境界深度モデルとみなす。詳細なPS検層データを用いて線形のSH波重複反射理論で増幅スペクトルを計算し、疑似観測増幅スペクトルとする。同理論を上記4層モデルに適用し、それを良く説明するように各層のS波速度を最小二乗法的に決める。その際、1層目のS波速度は各検層孔で固有、2-4層目のS波速度は全検層孔でそれぞれ共通とする。その結果、上の2-4層目のS波速度は、143、343、195m/sとモデル化された。このS波速度と1-4層による速度構造モデルは、PS検層による詳細な速度構造の特徴を良く反映する。またそれぞれに対応する増幅スペクトルは互いに良く類似する。
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