経済地理学年報
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公共交通ネットワークからみた近接空間の変化 : 岩手県を事例として
橋本 雄一
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1992 年 38 巻 3 号 p. 211-228

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抄録

本研究は岩手県を事例地域として, 公共交通によって形成される近接空間の変化を明らかにした. そのために, 発地区・着地区・年次の3元からなる近接性データに対して, 準3相因子分析法を用いて分析を行った. 分析の結果, 盛岡市とその周辺地区, 県南の東北本線沿線地区, 県北の東北本線沿線地区, 八戸線沿線地区, 北リアス線沿線地区, 南リアス線沿線地区, 釜石線沿線地区, 大船渡線沿線地区など, 主要な鉄道路線ごとに近接空間が形成されていることがわかった. さらに, 内陸部の近接空間で近接性が上昇しているのに対して, 海岸部では近接性が低下し, 公共交通の利便性の差が拡大していることが明らかになった. 本研究のようにケース数の少ない元を有するデータを分析する場合, 準3相因子分析法は, Tucker(1966)の3相因子分析法よりも適していると思われる. 特に, 少数年次間における因子構造の変化を明らかにすることができるため, 準3相因子分析法は, 3相因子分析法よりも地理学の分野での適用範囲は広いと考えられる.

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© 1992 経済地理学会
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