経済地理学年報
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コミュニティ型小売業の行方
石原 武政
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1997 年 43 巻 1 号 p. 37-47

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抄録

近年, 地域小売業に対する関心が高まっているが, その最大の要因は, 伝統的に地域小売業を担ってきた商店街の衰退化にある. 特に, 地域型あるいは近隣型といった, 地域社会と密接なかかわりをもったはずの商店街の衰退化が目立っている. 本稿では, 「コミーニティ型小売業」の概念を導入して, 小売業と地域社会との接点を探ろうとしている. 通信手段と移動手段が格段に発達した現在, 人びとは地域社会よりも市場経済と遠くの友人に多くを依存するようになった. しかし, 人びとはけっして地域社会から完全に抜け出すことはできない. コミュニティは変質しながら, 新しい姿を模索している. そして, その新たなコミュニテイをつくり出すうえで, 小売業は積極的な期待をかけられている. 小売業は, 地域社会に対して受動的であるだけではなく, もっと能動的なインパクトを発揮できる可能性をもっている. しかし, 市場における競争が, いわば自動的に小売業のコミーニテイ機能を促進するわけではない. そのためには, 競争と計画の調和が求められる. より具体的に, 地域における小売商業計画の策定過程そのもののあり方が問い直されなければならない.

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© 1997 経済地理学会
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