経済地理学年報
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マクロスケールにおける小売業の空間構造研究の動向と地理学的課題 : 日本の実証的研究を対象として
根田 克彦
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2001 年 47 巻 2 号 p. 19-38

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抄録

本研究の目的は, 商業学の分野で研究蓄積が多い, 小売業の空間構造に関するマクロスケール研究を対象として, 日本におけるその実証的研究の動向をまとめ, さらに, それを地理学的観点から研究する際の課題と, ミクロスケール研究に適用できる可能性を論じる.マクロスケールにおける小売業の空間構造の研究では, 購買力に関して自足的地域が, 研究の単位地区となる.マクロスケールにおける小売業の空間構造研究は, 基本的に小売環境が小売構造を規定し, 小売構造が小売成果を規定するとの認識に立脚して, 小売構造の形成メカニズムを解明することと, その評価をすることが主体である.この種の研究は次のように, 三つの研究分野に区分できる.1)小売構造の国際比較を行う研究, 2)日本国内の小売構造の地域的差異を明らかにする研究, および3)小売構造の地域的差異を規定する要因を解明する研究である.マクロスケールの研究を地理学に適用する際の課題として, 1)小売構造の比較研究を発展させること, 2)自足的地域のスケール問題を解決することがあげられる.次に, マクロスケールで得られた知見のうち, ミクロスケールで適用できる点として, 次のことがあげられる.1)小売構造の多様な側面を総合的に考察すること, 2)小売構造の形成要因を解明すること, 3)小売環境, 小売構造および小売成果間の概念的枠組みを構築すること, 4)小売成果の概念を適用することにより, 小売業の空間構造や近代化事業を評価することである.

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© 2001 経済地理学会
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