経済地理学年報
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内陸通関拠点を利用する国際物流の構造 : つくば・宇都宮地区における通関拠点を事例として
堀田 誉
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2003 年 49 巻 1 号 p. 1-18

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抄録

国際港湾・国際空港に付帯しない税関とその関連物流施設である内陸通関拠点は,プラザ合意以降1990年代にかけてのグローバル化期に数多く設置されてきた.本研究はこの時期に設置された茨城県つくば市と栃木県宇都宮市の内陸通関拠点を事例として,そこを利用する企業を取り上げ,その利用貨物の物流構造について分析を試みた.事例拠点の貿易は,取り扱い品目からみて地元地域に立地する工業の特色を反映している.貨物の発着地では,輸出入先としては,とくにNIES・ASEAN諸国,アメリカ合衆国との取引が目立つ.一方,国内における貨物の発着地は,基本的には両県域を中心に成田空港,束京・横浜港の後背地が主であるが,成田空港の通関業務の補完的機能をあわせ持つ,つくば税関で通関される航空貨物の場合,より広域的である.事例荷主企業は,生産拠点のグローバル展開に伴う企業内国際分業の形成を背景に,より迅速で低コストな輸出入体制の構築を目指して内陸通関拠点を利用している.しかし個々の企業についてみると,貨物の種類や企業内物流体制の違いから内陸通関の利用に特性が認められる.すなわち,中間財輸入とその保税加工後に再輸出するもの,海外生産拠点との製品間分業や工程間分業といった企業内国際分業に基づいて輸出入するものなどの形態がある.荷主企業はそれぞれが輸出入貨物について,独自の物流体制を構築することから,内陸通関拠点は荷主企業の多様なニーズに対応できる機能を持つことが要求されている.

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© 2003 経済地理学会
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