経済地理学年報
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筑波研究学園都市における研究者の労働力移動の分析 : 医薬品研究者を中心として
佐藤 裕哉
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2004 年 50 巻 3 号 p. 205-226

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抄録

本研究は,筑波研究学園都市の医薬品産業を事例に,研究機関,研究者の双方の視点から,研究者の労働力移動とその要因について分析する.研究機関側の分析から,研究者は新規就業と配置転換によって筑波に集まること,移動の要因として転職は少なく,とくに筑波内の企業間移動はほとんどみられないことが明らかとなった.研究者側の分析から,研究者の移動パターンが明らかとなった.新規就業の際は広域中心都市を経由して筑波へ流入するパターンを示し,配置転換の際は研究開発工程の川上部門から川下部門,研究部門からスタッフ部門への移動パターンを示す.また転職は,その多くが東京大都市圏内での移動であった.大学と企業とのネットワークは研究者の労働市場への送り出し機能を果たす.企業としては必要な知識をもつ人材を安定的に確保でき,研究者としては良好な就業機会ヘアクセスができるというメリットがある.一方,筑波の研究支援機関のサービス利用者はなかった.労働力移動へのローカルな要素は働いていないといえる.つまり,筑波の研究者は出身大学のネットワークを利用した就職や,企業内の配置転換に伴い全国から筑波に集中する.その後,再び配置転換により他地域に移動するというのが,おおよそのパターンである.しかし一部に,自らの能力を活かせる就業機会を求め,筑波を足がかりに東京大都市圏内の外部労働市場を指向するパターンもみられる.

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© 2004 経済地理学会
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