経済地理学年報
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情報化投資が地域の経済成長に与える影響 : 成長会計による地域別分析
安高 優司
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2006 年 52 巻 2 号 p. 67-81

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抄録

地域の情報化を推進する取り組みは,地方自治体などを中心に積極的に進められており,地域産業活性化策においても情報化の推進は依然として重要な課題のひとつである.地域政策として産業などの情報化を推進する場合には,本来は情報化投資の意義や効果を定量的に把握する必要がある.しかしながら,各地域の経済に情報化が実際にどのような作用を及ぼし,どの程度貢献しているのか,その実態を把握することはデータの収集の問題も含め非常に困難な作業である.本論考では成長会計の手法を用いて,一定の前提のもとで地域別データを推計し,情報化投資が国内の地域経済成長に及ぼす影響についての比較分析を行った.その結果,情報化投資による資本ストックの地域格差が経済成長への寄与の差をもたらすことを確認した.さらに,1980年代後半から1990年代にかけて,総生産成長率自体は3大都市圏のほうが高いが,情報関連・資本ストックの伸びが寄与している割合はむしろ非大都市圏のほうが高いという結果がみられた.利用したデータを前提とすれば,3大都市圏に比べて情報化が遅れていたと考えられる非大都市圏でも,この十数年間に急速に情報化投資を通じて生産性向上を果たしたことになり,非大都市圏における経済成長の大部分は情報化投資によって説明できる.また,1人当たりの情報資本装備率の高い産業を強化することで,非大都市圏における経済成長を高めることができる可能性もある.今後,さらに精緻な地域別情報関連資本ストックを把握できれば,様々な地域間での情報化投資の効果比較分析が可能になる.

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© 2006 経済地理学会
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