経済地理学年報
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地方中核都市の郊外における人口高齢化と住宅地の持続可能性 : 福岡市の事例
長沼 佐枝荒井 良雄江崎 雄治
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2008 年 54 巻 4 号 p. 310-326

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抄録

1970年代以降,地方中核都市は急成長を遂げ,現在も人口が増加し続けている.それに伴い深刻な住宅不足に陥ったが,大都市圏のように一定期間に集中した人口増加は経験していない.したがって,地方中核都市の郊外では,同じ年齢層の住民が多数入居せざるを得なかった大都市圏の郊外とは,異なる人口高齢化の様相を示す可能性がある.本稿では福岡市を事例に,地方中核都市の郊外においても,大都市圏と同様のメカニズムで高齢化が進むか否かを実証的に検討する.また人口維持の面から住宅地の持続可能性について考察を行う.福岡市の高齢化は2000年には都心において進んでいたが,2015年には郊外において急速に進行すると予測される.中でも高齢化の進行が著しいのが,1970年代に丘陵を切り開いて造られた,縁辺部の住宅地である.ここでは,第二世代の地区外転出が進んでいることに加え,離家した第二世代が第一世代の近隣に戻ってくる可能性が低いことも確認された.このような住宅地に,新たな住民が大量に転入するとは考え難いだめ,いずれ高齢化が進むと考えられる.また福岡の事例からみて,地方中核都市の郊外においても,第一世代の定住による加齢と第二世代の地区外転出により,地区の人口高齢化が進むという大都市圏と同様のメカニズムが顕在化する可能性が高い.さらに,こういった住宅地は,地区内の土地の勾配や公共交通の利便性に問題があることから,大都市圏,あるいは地方都市の平地上の住宅地と比べて,第一世代が単独で生活できる期間が短くなる可能性がある.

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© 2008 経済地理学会
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