経済地理学年報
Online ISSN : 2424-1636
Print ISSN : 0004-5683
ISSN-L : 0004-5683
研究ノート
日本国内における大手広告会社の事業所配置とその再編
古川 智史
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 64 巻 2 号 p. 73-92

詳細
抄録

    本稿では,日本の広告産業の特性に着目しながら,国内における大手広告会社の事業所展開を考察した.
    戦前,分析対象企業の事業所配置は,通信業の兼業の有無,取扱い広告の特徴から差異がみられたものの,基本的には大都市を中心としたものであった.戦時中には,企業整備が実施され,電通が4拠点を維持した一方,関西で創業した分析対象企業は東京の拠点を切り離すことになった.戦後,高度経済成長を背景に広告市場が拡大するとともに,地方圏に放送局が開局したことで,分析対象企業の事業所網が拡大した.加えて,媒体状況の変化による直取引の慣行の変化が地方圏への進出の契機になった.オイルショック以降,一時的に地方の広告市場に目が向けられたものの,広告出稿が大都市に集中する傾向が強まると,相対的に地方拠点を多く抱えた分析対象企業はその効率化を進めた.また,大阪に本社を置く分析対象企業は東京の拠点の強化を進めた.1990年代以降には,ローカルな広告市場における新規需要の開拓,賃金体系の見直しを背景に,地方支社を分社化する動きが進んだ.
    分析結果を踏まえると,大手広告会社の事業所配置は,広告主と媒体社との関係性の中で構築され,また広告取引では既存の関係が重視されるため維持される傾向にあったと考えられる.

著者関連情報
© 2018 経済地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top