経済地理学年報
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特集論文
グローバル・シティのオリンピック
―脱工業化,リスケーリング,ジェントリフィケーション―
荒又 美陽
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2020 年 66 巻 1 号 p. 29-48

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抄録

    本論は,東京,パリ,ロンドンが19世紀以降に実施してきたメガ・イベントとその開催地を手掛かりに,21世紀にこれらのグローバル・シティがオリンピックを招致した都市計画的な意味を検討する.19世紀中葉にはじまる万博は,国民意識の形成と労働者の教化を目的としており,都市においてはその近代化を内外に示すものであった.世紀転換期には植民地支配の正当性を示す展示も行われ,帝国主義的な意味合いを強めた.オリンピックは,当初は万博ほどの影響力をもたなかったが,スタジアムの建設などを通じて次第に都市におけるインパクトを強めた.第二次大戦前のオリンピックは,特に都市の郊外開発と軌を一にしており,戦後には郊外がさらに広がる巨大都市化との関係を読み取ることもできる.そこから近年の事例をみると,脱工業化の局面において,特に1990年代からの都市再生プログラムに連動する形でメガ・イベントの会場設定がなされていることを見て取れる.三都市は中心から半径10キロ程度の領域の再価値づけを共通して行っており,その範囲におけるジェントリフィケーションも進んでいる.それは,都市が投資を集中する範囲を定めたという意味でのリスケーリングであり,都市計画においてはグローバル企業を引き付けるための基盤づくりや観光化といった特徴を持っている.メガ・イベント招致は,三都市において,こうした政策の促進剤の役割を担っている.

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© 2020 経済地理学会
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