本稿では,求人票に記載された新卒保育士の待遇と地方養成校出身の新卒保育士の就職動向を分析し,保育士養成校のもつ,保育労働力供給源としての役割について考察した.
これまで各保育所は自宅からの通勤を前提として新卒保育士を募集してきた.東京圏を中心に保育ニーズが拡大するなかで,東京圏の法人は保育士の待遇を改善し,地方圏へと採用エリアを拡大させた.その結果,宮城県では東京圏への労働力の流出が顕在化し,それに歯止めをかけるべく宮城県での保育士に対する待遇は向上し,宮城県の保育士の就職先の選択肢は拡大した.他方,青森県へも東京圏法人の参入がみられるものの,自治体の財政難を背景に青森県では保育士の待遇改善が難しい状況におかれている.そのため,青森県の保育労働市場はインフォーマルな調整によって下支えされており,相対的に待遇の良い東京圏への保育労働力の流出が増加している.その結果,地元で安定して働ける職業として認識されてきた保育士として学生を就職させることを一つの魅力と位置付けて,学生募集をしてきた青森県の保育士養成校への入学者は減少傾向にある.
このように,近年,東北地方の養成校は,保育士が不足する東京圏にも保育士を供給する機能を有しつつある.この機能は縁辺地域でより拡大しており,結果的に地方の保育士養成校の保育士供給機能の低下が懸念されていることが明らかとなった.