経済地理学年報
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大会報告論文
デジタル時代のワークスタイルからみた地方圏へのオフィス立地の可能性
―高知県を事例として―
佐竹 泰和
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2022 年 68 巻 4 号 p. 295-314

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抄録

    本研究は,テレワークのようなデジタル時代の新しいワークスタイルが地方圏のオフィス立地にもたらす影響について明らかにすることを目的とする.テレワークとの親和性が高く,かつクリエイティブな人材(能力) が求められる産業の例として,高知県におけるIT・コンテンツ企業に着目し,そのオフィス立地と人材獲得の動向をワークスタイルとの関係から検討した.
    その結果,高知県内の企業はクリエイティブ人材を求めている一方,その獲得には満足していないことが明らかになった.対象企業の多くはコロナ禍を機にテレワークを導入したものの,テレワークによるクリエイティブ人材の採用は考えていなかった.地域内で不足するクリエイティブ人材を確保する手段としてテレワークに期待しつつも,それを実現することは困難であったからである.一方で,わずかながら副業による雇用形態で都市部のクリエイティブ人材を求める動きがみられた.大都市圏に偏在しがちな営業企画や新規事業企画のスキルをもつ人材へのニーズが高く,これらの職種はテレワークに不向きとされる業種でも必要とされている.地方圏に立地するオフィス機能の観点から,テレワークや副業・兼業を通じた大都市圏との関係構築は,地方企業において新たな価値の創出や経営管理・研究開発機能の充実を図るうえで新たな可能性を示した.

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© 2022 経済地理学会
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