再発1例を含む閉鎖孔ヘルニア20例を検討した。平均85.6歳で70%に循環器, 呼吸器の併存疾患があった。少なくとも62%がRichter型で, 嵌頓腸管の壊死による腸切除を要した症例は2例 (9.5%) であった。閉鎖孔ヘルニア修復後, 反対側の閉鎖孔ヘルニアが1例に発症したが, 嵌頓腸管の自然還納を認めた。閉鎖孔ヘルニアは高齢でリスク症例があり, また, 自然解除例など症状が軽度の症例も存在し, アプローチには開腹法のほか, 腹膜外法, 鼠径法, 腹腔鏡下手術がある。嵌頓が自然解除されない例で, 壊死の可能性の高い場合は開腹法で, それ以外の場合は上記の種々の手術法が可能である。自然解除例でも腸管の嵌頓壊死の可能性があり手術適応であるが, 高リスクの場合には経過観察の上, 治療方針を決めるのも実際的と思われた。また, 閉鎖孔を単純閉鎖した1例に再発を認めたことから, メッシュで修復したほうがよいと考えている。