抄録
今回われわれは, 大量出血により緊急手術となった症例について, 臨床学的特徴について文献的考察を加え報告する。1998年から2005年までに当科で潰瘍性大腸炎の診断で手術を施行した103例のうち, 大量出血で緊急手術となった9例 (8.6%) を対象とした。術式および合併症などの臨床学的特徴について検討を行った。年齢は平均33.3歳 (21歳から51歳)。男女比は7対2。病型は全症例で全大腸炎型であり, 内科的加療中に大量出血をきたし, 同日緊急手術が施行されていた。手術術式は結腸亜全摘+回腸瘻造設+直腸粘液瘻が2例に, また, 大腸全摘+IACA or IAA+回腸瘻造設 (Pouch operation) が7例に施行されていた。前者は1998年の症例であり, それ以降の症例は後者であった。Pouch operationでは出血は制御可能であり, 腸管の吻合・再建に伴う合併症はほかの原因で手術となった症例と同程度であった。大量出血により緊急手術となった症例の術式としては, 可能であれば積極的にpouch operationを考慮すべきである。