日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
極めてまれな腎盂腎杯引き抜き腎損傷の1例
藍澤 哲也船田 幸宏立花 幸人木村 靖彦内田 雄三矢野 彰一野口 剛
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2008 年 28 巻 6 号 p. 825-828

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抄録

患者は18歳男性。バイク運転中,左折する普通乗用車に巻き込まれて受傷し,当院救急外来に搬送された。左腎周囲の血腫を認めるも循環動態は安定していたため,ICUにて保存的治療を開始した。第2病日,依然として循環動態に変動はみられなかった。腹部CTで尿の尿管外漏出を認め,逆行性尿管造影を行ったところ腎盂は描出できず,腎盂腎杯まで達する尿管損傷を疑った。循環動態は安定しており,尿管ステントを留置した。その後腹膜刺激症状が出現,徐々に増強したため,第3病日,左腎摘出術を施行した。術後の摘出標本割面で腎盂腎杯が腎実質より引き抜かれていた。本症例のような腎実質損傷をほとんど伴わない腎盂腎杯引き抜き腎損傷は極めてまれである。尿管損傷の症例では,尿管ステント留置では改善しない本症例のような例もあることを留意しておかねばならないと考える。

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© 2008 日本腹部救急医学会
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