2008 年 28 巻 7 号 p. 943-946
症例は62歳,男性。自家用軽四乗車の飲酒運転で正面から木に衝突し前,胸部および上腹部を強打,当院救急外来受診した。Primary Surveyにてショックを呈しており,初期輸液療法にて循環動態は一過性に安定したがすぐに不安定化してしまい,transient responderとして緊急開腹手術を施行した。開腹すると,中および左肝静脈損傷が出血の責任部位であり,肝動脈を含む肝実質損傷は比較的軽度であった。肝臓を背側より挙上すると損傷部位を容易に把握できたためダメージコントロールはせずに直接縫合にて修復し,一期的手術を行うことができた。重症肝損傷で肝静脈損傷が主幹となるものは,transient responderになる要因の一つと考えられるが,急性期での治療方法の選択が非常に重要であり,今後は一定の明確な基準作りが必要になってくると思われる。